50代会社員、娘から二世帯住宅の購入を相談されています。定年まで数年ですが「親子リレー」で住宅ローンを組んで大丈夫でしょうか?
50代会社員のAさん、夫婦で賃貸住宅に住んでおり、娘さんから二世帯住宅の購入を相談されたそうです。親子リレーで住宅ローンを組みたいと言われたそうですが、定年まで10年もなく、今から住宅ローンを組むことに抵抗があるとのこと。50代で組む親子リレー住宅ローンについて注意点を解説します。 ▼住宅ローンは「繰上げ返済」すべき? メリットについて解説
親子ローンには、返済期間が長く、借入金額も多くできるメリットはあるが……
親子ローンのメリットについて確認しましょう。 親子リレーローンは、親から子にローンの返済義務が引き継がれるので、一世代で契約するよりも返済期間を長く設定できること、借入金額も多く設定できるというメリットがあります。 ローン契約は1本ですが、親子とも住宅ローン控除を受けることができるという税務上のメリットもあります。 注意点も確認した上で契約する必要があります。
生活環境が変わってもローン返済の縛りは変わらない
Aさんのお嬢さまのライフイベントは、将来変わる可能性があるでしょう。 仮に、「転勤になって別居する」ということになった場合、思いのほか転勤先での滞在が長引いて、そのうちに転勤先での住宅を検討したいと思っても、住宅ローンは2本持つことができません。さらに、二世帯住宅に残された両親にとってはフィットしない大きい住宅に住み続けなければならなくなります。 ローン返済は長期間固定されるため、状況が変わってもローン返済から逃れることはできず、対応しきれない可能性が出てきます。
親が亡くなっても子どもに債務は引き継がれる
通常、ローン契約を締結する時に、契約者が死亡すれば残債は残らないよう、団体信用生命保険(団信)に加入します。 フラット35であれば、団信の契約者を親にすることができるので親が亡くなれば残債は残りません。他方、民間の金融機関であれば一般に子が契約者となります。仮に親が早くに亡くなった場合で、子が契約者の場合、返済義務はそのまま残り、前倒しで子ども世代の返済が始まります。想定外のタイミングで返済負担がのしかかってきたということもあり得ます。
相続税対策、贈与税対策を怠ると面倒なことになる
相続税、贈与税のしくみや特例について確認しておかないと、思わぬ納税義務が発生したり、控除を利用できなかったり、相続時のもめごとに多くの時間や手間がかかったりする可能性があります。 まず、相続税についてです。親子リレーローンでは、基本的に親子間の住宅の持ち分は、親子の購入資金の負担割合と同じになるように設定されている場合が多いです。 例えば、住宅価格が5000万円で、親が2000万円、子が3000万円の負担割合で親子リレーローンを契約した場合、住宅の持ち分は親が5分の2、子が5分の3となります。 例えば父親が亡くなってお嬢さまに兄弟姉妹がいた場合、残された母親はどこに住むのかも含め、住宅をどのように相続するかで、もめる可能性があります。 次に贈与税についてです。兄弟姉妹がいない場合、相続税でもめることがないので、いずれは子どもの財産になるのだからという理由で、子の単独所有とした場合、親が子に対して2000万円相当の生前贈与を行っていることになり、多額の贈与税の対象になります。 通常のケースでお嬢さまがご両親などから、住宅購入のための贈与を受けた場合、一定の限度額まで贈与税が非課税となる税法上の特例制度があります。親子リレーローンでは、親の返済分に相当する住宅は親の持ち分となっていることが多いため、親の返済分2000万円は特例の適用にはなりません。