『【推しの子】』第2期OP主題歌、中島健人とキタニタツヤによるGEMN「ファタール」に集まる注目
Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの7月24日付のTOP10は以下の通り(※1)。 【写真】中島健人の卒業&改名前夜のSexy Zone 1位:鹿乃子のこ(CV.潘めぐみ)、虎視虎子(CV.藤田 咲)、虎視餡子(CV.田辺留依)、馬車芽めめ(CV.和泉風花)「シカ色デイズ」 2位:GEMN「ファタール」 3位:三代目 J SOUL BROTHERS「BLAZE」 4位:Zachz Winner「doodle」 5位:MAZZEL「Seaside Story」 6位:ミーガン・ザ・スタリオン「Mamushi (feat. Yuki Chiba)」 7位:こっちのけんと「はいよろこんで」 8位:アーリャ(CV:上坂すみれ)「1番輝く星」 9位:ZZEN「flower (feat. Worldname)」 10位:suis from ヨルシカ「若者のすべて」 今回は2位を獲得した中島健人、キタニタツヤのユニット・GEMN「ファタール」をピックアップする。本曲は7月3日から放送中のTVアニメ『【推しの子】』第2期(TOKYO MXほか)OP主題歌に起用されている。2023年に放送された同アニメの第1期は、YOASOBIが担当したOP主題歌「アイドル」が世界的大ヒットしたことに加え、『【推しの子】』という作品自体も、Yahoo!検索大賞2023のアニメ部門、日本アニメトレンド大賞2023の日本アニメトレンド大賞、ABEMA AWARD 2023の特別賞、「ネット流行語100」2023の年間大賞など、数々の賞を受賞。2023年を代表するビッグヒットコンテンツになったことも記憶に新しい。
中島健人とキタニタツヤ、息の合ったボーカル&ダンス
“推し”という言葉が、一気に広まり当たり前のように使われるようになったのは『【推しの子】』のヒットも一役買っているだろう。この7月からの第2期の放送に向け、『【押しの子】』の公式YouTubeでは、放送の約1カ月前にメインPV第1弾を公開。そのBGMに一部使用された楽曲について、誰が歌っているのか話題となった。期待が高まる中、放送直前の6月30日、OP主題歌「ファタール」を担当するGEMNの正体が中島健人とキタニタツヤであることが解禁された。 かたや、中学生時代からトップアイドルとして走り続けながら、俳優、ステージ演出、ソロライブなど多角的にエンターテインメントを体現してきた中島健人。もう一方は、これまで人気アニメの主題歌を数多く手がけ、昨年「青のすみか」(TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」OPテーマ)のヒットで、昨年『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たしたシンガーソングライターのキタニタツヤ。まさに誰もが予想しなかった、否、予想不可能だった斬新な組み合わせと言える。作品のファン、中島ファン、キタニファンならずとも、驚いた人も多かったのではなかろうか。 「ファタール」は、怪しげでダークなムードを醸し出しながら、サビで力強いメロディを聴かせるアップチューン。中島とキタニが交互に歌い紡ぐ形を軸に置きながら、ユニゾンを効果的に使い、じつにドラマティックな1曲に仕上がっている。中島とキタニの声質の違いを活かし、ユニゾン部分ではハモっているように聴こえること、それぞれがパート毎に巧みに声音を使い分けていて2人以上の人数で歌っているように聴こえるのは、本当に驚愕。目まぐるしい楽曲展開との相乗効果で、この曲の作品性にもつながる“カオス感”を見事に表現している。 構成やコード進行も凝っていて、全体的に譜割りも細かく言葉を詰め込んでいるが、そこにせわしなさをまったく感じさせないのは、2人のリズム感、つまりは2人のボーカルの息がぴったり合っている証拠であろう。また、完璧なリズム感で安定してクリアな中高音を響かせる中島がいるからこそ、キタニは巻き舌っぽい発音を強調してラップっぽさを強調したりと、1人で歌う時よりも振り切ったアプローチが目立ち、綺麗に歌うよりもエモーショナルに表現することを優先しているように思う。中島の歌にも注目してほしい。彼は最初の歌い出しと最後のワンフレーズを担当しているが、この2カ所だけでまったく異なる歌声、違うアプローチを見せているところに、ボーカルコントロールに長けていることがわかる。 最後に「ファタール」のMVについて触れたい。作り込んだセット、CG、細かいカット割りと、非常に時間をかけて作られたことがわかる圧倒的なアート作品だ。サビの部分では、中島とキタニが一緒にダンスする姿も披露されている。中島をフロントに置きながらも、同じ振り付けで踊り、見劣りしないキタニの身体能力の高さに驚く。同時に、どのシーンでも完璧に表情管理している中島のアイドルとしての自覚が、このMVのひとつの肝になっており、繰り返し観たくなる。同MVは、公開から約3週間の7月29日現在で視聴回数が1020万回を突破しており、まだまだ伸びそうな勢いだ。これは、予想以上に多くの人が「ファタール」に注目している証拠である。 ※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2024-07-24
伊藤亜希