ひざの上はすぐ満員、マイクロブタと癒やしの時間 広島市と周辺でカフェ次々 法的には家畜、飼うには注意点多数
愛らしいマイクロブタと触れ合えるカフェが2023年秋、広島市と周辺で相次ぎオープンした。寄り添ってくるぬくもりに癒やされるだけでなく、アレルギーを引き起こしにくいことから、ペットとしても注目を集める。ただ法的には「家畜」の扱いのため、犬や猫の飼育とは異なる注意点も多い。 【写真】愛らしさあふれるマイクロブタ(全11枚) 床に座ってひざに布団を掛けると、室内にいた14匹のマイクロブタが続々と集まってきた。中区猫屋町にオープンした「m Little Pigs Cafe」。群れる習性があるため、ひざの上はすぐに満員に。その寝息に「胸キュン」状態だ。 カフェは、飼い主に送り出す前に人に慣らすブタの「保育園」の位置づけ。修学旅行でオーストラリアから訪れた中学3年生キャスィディ・デヴィさん(15)は「動物と触れ合うカフェは日本独特だけど、特にブタは新鮮。緊張するけどかわいい」と背中をなでていた。 運営するのは、安佐北区の山口昌代さん(39)。きっかけは娘のためだった。中学2年生の娘は動物が大好きなのに昔からアレルギーがひどく、触っただけで眼球が膨らむほど腫れた。動物に触る時は薬の服用が欠かせなかった。 英国で交配されたマイクロブタの存在を知ったのは、2017年ごろ。一般的な養豚ブタが体重100~300キロなのに対し、おおむね20キロ前後。猫や犬に比べて硬い体毛は飛びにくく、アレルギーを起こしにくいことにも引きつけられた。 当時は日本で入手できず、英国在住の知人に頼んで牧場と交渉を続けた。日本での飼育環境も厳しく審査されるため、自宅がある安佐北区可部に牧場と豚舎をつくった。新型コロナウイルスによる英国での都市封鎖も相まって、6匹を輸入できるまで3年かかった。 家畜商の協力を得て、可部生まれのマイクロブタは40匹以上に。カフェでの「慣らし期間」を経た約15匹が、新たな飼い主の元へ巣立ったという。山口さんは「ブタの飼育をためらう人はまだ多いが、そんな人はカフェで癒やされてほしい」と話す。 先駆けとして全国10カ所で「mipig cafe」を運営するHooome(ホーム)=東京=も昨秋、イオンモール広島府中(府中町)に出店した。オープンから4カ月で25匹がペットとして「卒業」した。北川史歩取締役は「19年3月に都内で1号店をオープンして以降、マイクロブタを迎える家庭は全国的に増えている」と話す。 注意点は多い。山口さんの店もmipigも、客に店舗の「はしご」を禁じている。豚熱を媒介する可能性があるからだ。人間は感染しないため、知らないうちにブタへうつす恐れがある。 実際に飼い始める場合も、法律上は家畜であるため、住んでいる自治体によっては家畜伝染病予防法に基づく許可が必要となる。死んだ場合は、法律で定められた「死亡獣畜」受け入れが可能な施設以外での処理は禁じられている。ペット霊園などでの通常の「お別れ」ができないケースも多く、自宅の庭で埋葬することも法律違反となる。 北川さんたちは現状の法律の見直しを国に働きかけている。「これまで家畜として扱われてきたブタさんが、癒やしを与えるペットとしても注目されるようになった」と北川さん。法整備が追いついていない現状も踏まえ「命とは何かを考えさせられる」と話している。
中国新聞社