春闘のヤマ場「集中回答日」って何?
春闘が3月12日の「集中回答日」にヤマ場を迎えます。春闘は、労働者(組合)が会社側と給料アップや労働時間の短縮など、待遇をよくしてもらうためにする交渉です。特に今年の春闘の場合、アベノミクスによる円安効果で回復しつつある企業の業績が給料アップにどうつながるかが焦点になっています。最大のポイントは、毎月の給料の基本給を底上げするベースアップ(ベア)を認める企業がどの程度出てくるのか。自動車や電気などの大手企業の組合は5年ぶりにベアを要求しており、会社側が12日の集中回答日にどんな回答をするのかに大きな注目が集まっているのです。 では、なぜ3月12日に会社側の回答が集中するのでしょうか。
交渉力を強めるために組合同士で結束
じつは春闘では組合同士の連携プレーが非常に重要とされています。労使交渉では労働者側がそれぞれの会社と個別に交渉を行うとその力が弱くなります。このため、春闘では同じ産業の組合同士が結束し、会社側と交渉をするのです。たとえば、トヨタや本田技研、日産自動車などが加わる「自動車総連」では、今年の春闘の統一交渉日を2月19日、2月26日、3月5日に設定。集中回答日を3月12日とし、そこから3月21日までを回答引き出しのヤマ場としています。そのうえで、3月末までの決着を目指すという日程です(中小企業は4月末)。産業別の組合間のスケジュールの調整は組合の中央組織である連合が行います。春闘は、全国の組合が日程を合わせて交渉を行うことで、全体の給料、労働条件などをよくしていこうとする取り組みなのです。 とはいえ、結束して交渉するからといって要求が通るとは限りません。
交渉決裂してスト突入の例も
たしかに業績が好調な産業ではベアを認める会社も多くなるかもしれません。自動車総連は今年の春闘で統一要求としてベア3500円を要求。個別の会社でみると、トヨタは統一要求に500円を上乗せした4000円を要求し、本田技研は3500円、日産自動車もやはりベアを含む昇給の原資として1人あたりで平均3500円を要求しています。これに対して、日産自動車などは満額で回答する方針といわれています。 しかし、業績がよくない産業はそうはいきません。過去の春闘では、交渉が決裂してしまい、組合がストライキを強行するということがよくありました。特に1974年代ごろにはオイルショック後の不況でリストラも増え、半日以上のストライキが5197件、参加した労働者の数が362万人以上に達しています。最近も2011年に金属情報機器の組合の「JMIU」が会社側の低額回答に抗議して、約4500人がストライキを行いました。また昨年も、NTTグループの「通信労組」が会社側による集中回答日のゼロ回答に抗議して翌日ストライキに突入、その結果、会社側が上積み回答をしています。まさに「春闘」という名前の通りというわけです。
非正規雇用など働き方が多様化
ただし、近年は春闘も労働者側と会社側が正面からぶつかり合うことは少なくなっています。その理由はまず、労使双方が意思の疎通をはかり、会社の経営・生産について合意形成することを目的とした「労使協議」が定着してきたこと。また、働き方が多様化し、組合に入らない非正規雇用が増えたことも一因といわれています。しかし、安倍政権が経済界に給料アップを要請するなど、今年の春闘には働く人たちの関心も高まっています。ベアではなく、一時金のアップを考える会社が多いともいわれるなかで、3月12日の「集中回答日」にはどのような答えが出るのでしょうか。 (真屋キヨシ/清談社)