美智子さまのローブデコルテ、白黒写真からも伝わる生地の輝きと織りの緻密さ…伝統の技は二人の妃のドレスへ
明暉瑞鳥錦は同社にとって特別な意匠だ。他の顧客に使用することはない。ただ、皇后となられた美智子さまのご意向でその後2回だけ制作した。90年に秋篠宮さまと結婚された紀子さまのための生地は、同じ意匠が金色から銀色へグラデーションになっている。93年に皇太子妃となられた雅子さまのために織りあげた生地は、同じ意匠を描く金糸の濃淡に差をつけて、色調を変化させたものだ。
5代「龍村平蔵」を今年9月に襲名した同社社長の龍村育(いく)さん(51)は、明暉瑞鳥錦の制作を「難しい技術に職人が挑戦し、経験を次の世代へ継承することにもつながります」と語る。
受け継ぐ者も少なくなった日本の伝統技術を今に伝え、次の世代へと伝えていく。美智子さまの装いにはそのような意味も込められているようだ。(おわり。この連載は福島憲佑が担当しました)
◆ローブデコルテ=襟ぐりを大きく開け、肩や背を露出させた袖なしのイブニングドレス。女性の正礼装とされ、旧総理府が1964年に告示した規定では、勲章を着用する際の服装を男性はえんび服、女性はローブデコルテもしくは長袖のローブモンタントなどと定めている。