「わかってるなお前…」遅刻して高座でいじり倒された蝶花楼桃花が語った“落語の世界”
2022年に女性で10人目となる真打に昇進した落語家・蝶花楼桃花さん。 上手い、可愛い、華があると、三拍子揃っていることから「寄席のプリンセス」と呼ばれる桃花さんは、女性だけの寄席公演「桃組」を成功させ、注目を集める女流落語家の一人です。 【写真】「寄席のプリンセス」と呼ばれる蝶花楼桃花さん 飛ぶ鳥を落とす勢いの桃花さんだが、日々失敗と挑戦の繰り返しだといいます。最近では出番を間違えてしまうという“しくじり”も……。 落語好きが高じてエッセイ本『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)を刊行した俳優の南沢奈央さんと、芝居と落語の違い、芸を極めることの楽しさや苦しさについて語り合います。 (※この記事は前後編の後編です)
蝶花楼桃花×南沢奈央・対談「ゴールのないこの世界で」
南沢 『今日も寄席に行きたくなって』の連載中、真打に昇進される直前の桃花師匠、当時の春風亭ぴっかり☆さんに取材して、「真打はスタートライン」という章にまとめました。あの時は、しきりに「こわい」と仰っていました。 桃花 相当「こわい」と言っていたようですが、実は自覚がないんです。それくらいこわかったのでしょう(笑)。去年の春に真打昇進しましたが、今でも「こわい」ですよ。この先もずっとそうなんでしょうね。 南沢 でも、その「こわい」は以前と種類が違いませんか? 桃花 昇進前は未知の世界への「こわい」でした。今は例えば、寄席で真打としてトリも取らせてもらうようになって、寄席への思いがより強くなったし、落語への愛情も深まったことでの「こわい」のようです。私、本来は積極的に自分を出していきたいほうなんですけど――芸人はみんなそうですが(笑)――、そんな私でもこんなふうになるんだと驚いています。 南沢 もっと寄席のこと、落語界全体のことを考えるようになった? 桃花 私なんかが言うのもおこがましいことですが、「できることはなんだろう?」って考えるようになりました。コロナ禍の休業や入場制限で寄席の経営が苦しくなって、「寄席がなくなることって、あり得るんだ」と実感した時、どうやって寄席を残していくかを本気で考えました。辿り着いた答えの一つが「桃組」(先月号の前編参照)でしたし、これからもお客さんに寄席に来て頂くためにできることは何でもやっていきたい。そんな考えを持つようになったのは、真打になってからの大きな変化ですね。