ウォンバットはお尻が「超硬い」のはなぜなのか、四角いうんちをするのはなぜなのか
どうやって糞を四角くするのか?
だが、具体的な答えを見つけるのは簡単ではなかった。ヤン氏らは、北米の動物園から死んだウォンバットの内臓を入手できなかったため、オーストラリアから交通事故で死んだ2匹のウォンバットの腸を取り寄せた。 「最初は、肛門が四角いのか、胃のあたりで(立方体に)整形されるのだろうと考えました」とヤン氏は振り返る。実際に解剖してみると、ヤン氏の予想は誤っていた。ヤン氏たちは、ウォンバットの腸に驚くほど伸縮性があることに気付く。 食べものが消化管を移動して消化されるなかで、便の形成を助けるのが腸による圧力だ。つまり、便の形は腸の形状によって決まる。そこでヤン氏のチームは、ウォンバットとブタの腸に空気を入れて膨らませ、伸縮性を測定、比較してみた。 ブタの腸の伸縮性は、比較的均等だった。このため丸い糞が作られる。ところがウォンバットの腸は、これよりずっと不規則な形をしていた。周囲の組織と比べてよく伸びる溝状の構造が2つ見つかったのだ。ヤン氏は、ウォンバットの糞が四角くなるのは、こうした独特の腸の構造によるものだと考えている。 発表原稿を査読したスウィンボーン氏は、「生物学的、生理学的な説明にたどり着いたのは、これが初めてでしょう」と話す。同じく初期に査読を行ったクレメンツ氏は、「貴重な発見だと思いますが、糞が立方体になるメカニズムについてもう少し説明できるとよいかもしれません」と付け加える。 サイコロ状の糞ができる理由には、まだ謎が残っているという点には、当のヤン氏も同意する。ヤン氏はその後、ウォンバットの腸の最後の17%の部分で立方体が形成されることや、腸の断面の特性についての論文を発表した。この初期の発見だけでも、製造業などに広く影響を与えそうだ。 ヤン氏は、自然界で立方体ができること自体が珍しいことだと言う。人間が立方体を作るにしても「やわらかい材質のものを整形するか、固い物質を立方体状に切り出すかのどちらかです。でも、ウォンバットは第3の方法を知っているということですね」とヤン氏は語った。