新型ボルボEX30は革新的な1台だった!!! 日本にもピッタリなコンパクトカーの実力とは?
パワフルだけどおだやか
ボディはコンパクトながらもバッテリー容量は69kWhと大きめで、272psと343Nmを発揮するシンクロナスモーターの効率も良好なことから、航続距離は実に560kmを誇る(WLTCモード)。私は、自宅から鈴鹿サーキットまでの約400kmをノンストップで走れるかどうかを実用性の目安としているので、560kmもあれば十分以上。ちなみに、Bセグメントで500kmを越える航続距離を実現したBEVを、私は寡聞にして知らない。 走りの性能にもまったく不満を覚えなかった。 車重が2tを切っているのにモーターのパフォーマンスがずば抜けて高いので、EX30の加速が俊敏であることはいうまでもない。ちなみに0~100km/h加速は5.3秒でクリアする。おなじBセグメントの標準はエンジン車でもBEVでも8~9秒なので、EX30の速さが段違いなのは明らかだ。 かといって、一部ブランドのBEVのように、速さを誇示するセッティングにしていないところも好ましい。市街地をゆっくりと流しているときはあくまでも扱い易さ重視。いっぽうで、アクセルペダルを大きく踏み込んだときのみ俊足ぶりを発揮する設定は実に良心的で安全なものといえる。 アクセルペダルのコントロール性という意味でいえば、ワンペダルコントロールの設定が見直されたのも大きな進化だ。 ワンペダルコントロールとは、ブレーキペダルを操作しなくても、アクセルペダルだけで市街地走行のほぼすべてをまかなえる操作系のこと。裏を返せば、アクセルペダルで減速もコントロールするため、慣れないとギクシャクしがちな傾向があって、ボルボの場合も、初のBEVとして登場した「C40」および「XC40」のワンペダルコントロールもやや扱いにくかった。 けれども、EX30はアクセルペダルを離したときの反応が穏やかなのでギクシャクしにくく、アクセルペダルを完全に離してひと呼吸待てば完全停止まで減速してくれるので、扱い易さの点でも文句なし。たった1世代でよくここまで進化したものと大いに感心させられた。 それとともに感銘を受けたのがシャシーの完成度で、ちょっと硬めの乗り心地ながら足まわりの動き方はスムーズなほか、路面の大きな段差を乗り越えてもイヤなショックが伝わってくることは希で、なかなかクオリティの高い乗り味だと感じた。 このソリッド傾向のサスペンションは機敏なハンドリングを実現するにも役立っていて、市街地での走りはなかなか機敏。逆に機敏すぎて、ハードコーナリング中に急激にアクセルペダルを閉じると、急激なハンドリング特性の変化を招く傾向が見られたほどで、もうちょっと穏やかな特性のほうが好ましいような気がする。 エアコンやオーディオなどの操作系のほか、スピードメーターを始めとするメーターパネル機能までセンターディスプレイに集約した割り切り方は、ひょっとすると一定の年齢以上の方々からは不評を買うかもしれない。けれども、慣れてしまえば決して使い勝手は悪くないし、スイッチ類や表示系の集約化は「生産時やリサイクル時のCO2削減に役立つ」と、聞けば、納得せざるを得ないのではないか。 そのほかにも環境性や安全性の点で数々の工夫が凝らされているのも、いかにもボルボらしいところで、最近は環境問題に対する意識の高さでもライバルを置き去りにしているように思える。そんなところが、ボルボの強烈な魅力となっていることは否めない事実だろう。
文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)