森保ジャパンはなぜこれほど苦しんだ? 決定力と阻止力の差が表れたインドネシア戦。W杯最終予選5試合で一番面白い試合だった
インドネシアはアグレッシブな強敵だった
ただし、収支を考えると、どうか。時折、インドネシアが繰り出すカウンター、日本のプレスを引き込んでからのロングボールには、背後を何度も陥れられた。9分の板倉など、個人の対応ミスも重なっている。35分にオウンゴールで先制し、その5分後に相手が負傷して1人少ない時間帯に2点目を決めることができたが、難しい前半だったのは間違いない。 この執拗なロングボールをどうにかしなければ、2-0さえ砂上の楼閣だ。ロングボールの対処は、前で出所を抑えるか、後ろで落下地点を埋めるかの2通りしかない。前半はどちらも中途半端だった。これはFWとDFで1人ずつ、負傷によるスタメン変更があり、連係が低下した影響もある。 後半はこの点が修正された。日本は開始直後からハイプレスに行き、明確に相手の出所を抑えにかかった。相手ゴールキック時も、ペナルティエリアのラインを容易に越えさせず、ロングボールを蹴らせる位置も、サイドのタッチライン際へ追い込み、窮屈にする。 ただし、出所を抑えると言っても、遮二無二にハイプレスに行ったわけではない。ボランチは守田が前へプレス、遠藤は後ろに残ってリスク管理。前半は2人ともにプレスに行く場面も見られたが、後半は明確に縦関係に変わった。このハイプレス修正が功を奏し、49分に高い位置でボールを奪った守田のゴールで3-0とし、試合を決定付けた。 日本はそのままハイプレス続行で、出所を抑える対策を続けた後、69分に菅原由勢が4点目のゴール。79分に旗手怜央と大橋祐紀が入った辺りではミドルエリアで構えるようになり、段階的に守備を適応させた。 一方、取り返すしかないインドネシアは、錨役の遠藤にもプレッシャーをかけるために前へ一層アクセルを踏んだ。後半の日本はビルドアップが困難になり、無理をせずロングボールを蹴る傾向が強くなっている。必然、相手に押し込まれる時間も増えたが、前田大然や伊東純也といった起用を見る限り、自陣に引き込んでのカウンター、ロングボールを、今度は日本のほうが主体的に選んだということだろう。先手を取れば、戦略は楽になる。決定力は宝だ。 それにしても、インドネシアはアグレッシブな強敵だった。結果は4-0だが、環境要因もあり、スコアほどの差は感じなかった。連係が深まれば、より強いチームになりそうだ。ここまでの最終予選5試合の中で、一番面白い試合だった。 文●清水英斗(サッカーライター)
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