看板下した名湯を「守らねばならない日本の宝」と買い取った矢先に最強台風襲来 目を覆う被災にも志は衰えず、復活への道を探る 湯川内温泉かじか荘
鹿児島県出水市武本の湯川内温泉かじか荘が、8月末の台風10号の影響で甚大な被害を受けた。施設は昨年9月末に閉まり、今年7月に購入した一般社団法人純温泉協会=大阪、山口貴史代表(53)=が再開に向けて動いていた。 【写真】外から見た下の浴室(右)と脱衣所(左)。窓ガラスは割れ、川の水が流れ込む=4日、出水市武本の湯川内温泉かじか荘
同温泉は約260年前に発見されたとされ、紫尾山北側の山あいの湯治場として愛されてきた。温泉が浴槽の底の地面から湧き出る「足元湧出」が特徴で、湯の鮮度は全国でもトップクラスという。泉質はアルカリ性単純温泉で、湯は少し色味の付いた透明。浴室は敷地内の手前と奥に計2カ所ある。 山口さんは鹿児島を訪れるたび利用するほど気に入っていた。「足元湧出の温泉は国内でも少なく貴重」。施設が閉まったのを知り、「守らなければならない温泉。日本の宝」と前所有者から購入に踏み切った。 出水では8月29日に台風が襲来。翌30日朝、山口さんが現地を訪れると、駐車場の路面は盛り上がり、手前の浴室と脱衣所には無数の石や川の水が流れ込んでいた。隣にある2階建て宿泊棟との間の通路も、大量の石や土砂で埋まっていた。 施設をどういう形で再開しようか模索していた段階での被災だった。復旧には費用がかかるため、ボランティアによる片付けや、クラウドファンディングなどで資金を募りたい意向。具体的な方針が決まったら、協会のホームページで告知する。
山口さんは「ここは聖地と思うくらい価値の高い温泉だと思う。皆さんの協力をもらい、何とか復活にこぎ着けたい」と語った。施設は本町商店街から南側へ5キロあまりの場所にある。 ※写真は純温泉協会の許可を得て撮影。現在、立ち入りはできない。
南日本新聞 | 鹿児島