夏のボーナス予想「民間企業の平均40万8770円」は高い?低い? 研究員がズバリ指摘「喜びも半々、本当はもっと上がるはず」
汗ばむ陽気の日が多くなると、夏のボーナスが気になるものだ。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2024年4月9日に発表した「2024年夏のボーナス見通し~企業の好業績と人手不足を背景に増加続く」によると、夏のボーナス支給額予想は、民間企業で1人当たり40万8770円、国家公務員で1人当たり65万9500円というもの。 (図表)2024年夏のボーナス見通し(三菱UFJリサーチ&コンサルティング) これってウハウハの額なのか、それともガッカリの額なのか、調査研究員に聞いた。 ■製造業平均が55万952円、非製造業が38万281円 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査は、事業所規模5人以上の企業を対象に、厚生労働省「毎月勤労統計」や内閣府人事局資料などをもとに予測した。 2024年夏の民間企業のボーナスは、1人当たり40万8700円(前年比2.9%増)で、3年連続で増加が見込まれる。好調な企業業績と堅調な雇用情勢が追い風となり、前年からの伸びは加速しそうだ【図表1】。 背景には、企業の経常利益がコロナ後、加傾向が続き、2023年4~6月期には過去最高を更新した。その結果、企業の内部留保(利益剰余金)も2023年末時点で571兆円と、過去最高金額を記録した。 こうした企業業績の好調ぶりを追い風に、製造業の平均が55万952円(同2.9%増)、非製造業の平均が38万281円(同3.0%増)と、ともに昨年を上回る見込みだ。また、支給される労働者の割合は80.1%(同0.1%増)と、2年ぶりに上昇しそうだ。 一方、国家公務員(管理職および非常勤を除く一般行政職)のボーナス(期末・勤勉手当)は、1人当たり65万9500円(前年比3.5%)と、民間を大きく上回る伸び率を示す見込みだ【図表1】。これは昨年11月の給与法改正で、ボーナスの基準となる基本給が約1.1%増加したことなどが大きい。
昨年冬ボーナスが悪すぎて、控えめに予想した数字
今回の夏のボーナス見通し、どう見たらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめた三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員の丸山健太さんに話を聞いた。 ――民間企業の平均支給額が1人当たり40万8770円で、前年より2.9%上がる予想ですが、この金額は「上がってよかった!」と喜ぶ数字なのか、「もっと上がるはずなのに」と残念がる数字なのか、ズバリどちらですか。 丸山健太さん まあまあ、喜んでいい金額なのではないかと思います。個人的にはもっと上がってほしいし、上がる伸び代(しろ)はあるはずだという思いはあります。しかし、まずは【図表2】の夏ボーナス予測の「支給総額」を見てください。 支給総額は、1人当たり平均支給額×支給労働者数として計算します。つまり、企業が今夏のボーナスのために出す人件費の総額ですが、前年比より4.4%増えると見込んでいます。 これは直近の消費者物価指数(2024年2月現在)の3.3%増を上回るばかりか、2023年通年の消費者物価指数3.8%増より高い数字です。 現在、23か月連続実質賃金(2024年2月の毎月勤労統計)のマイナスが続いていますが、物価上昇分より高いボーナスを出すことによって、ようやく実質賃銀がプラスになる展望が開けそうです。 そうなると、個人消費の回復を下支えすることが期待されます。 ――「もっと上がる伸び代(しろ)があるはず」と言いましたが、どういうことでしょうか。 丸山健太さん 民間企業の平均支給額を前年比2.9%増と推測したのは、じつは控えめな数字です。企業が利益剰余金を内部留保として貯め込んだ額は、571兆円という空前の巨額にのぼります。 また、瞬間風速的に非常に好調な企業業績や、4万円に迫る日経平均株価の強さを考えると、個人的にはもっとボーナスを出せるはずという思いはあります。しかし、昨年(2023年)冬のボーナスが悪すぎました。 昨年も春闘賃上げ率は3.60%と、30年ぶりの高水準だったので、当社は冬のボーナスの平均支給額を前年比2.2%増と予想したのです。しかし、実際は0.7%増にとどまり、想定外の小幅な伸びに終わりました。支給総額も1.8%増と、物価上昇分をはるかに下回りました。 春闘の高い賃上げ率にもかかわらず、「期待外れ」の結果に終わったのです。