須崎優衣「危ない状況だったけど…精神力鍛えられた」レスリング聖地ダゲスタンでVS熊 五輪連覇へクレイジー修業
レスリング女子日本代表が1日、新潟・十日町市の桜花道場でパリ五輪に向けた強化合宿を公開した。女子50キロ級の須崎優衣(24)=キッツ=は5月にロシア南部のダゲスタン共和国を単身で武者修行に訪れた際、現地の動物園で熊、虎、狼(オオカミ)と檻(おり)の中で相対した珍エピソードを告白。パリ五輪での2連覇へ向け、猛獣との“場外戦”で度胸と強じんな精神力を磨いてきた。 通称“金メダル坂”を先頭で駆け上がった。須崎は伊調馨、吉田沙保里さんも鍛えた日本女子伝統の拠点で「レスリングに集中できる素晴らしい環境。五輪前に来ることができて良かった」と充実の汗を拭った。 吉田さんはかつて206連勝や五輪3連覇などで「霊長類最強女子」と呼ばれた。だが、須崎は数週間前、その上を行く“百獣の女王”の座に挑んでいた。5月に単身で訪れたダゲスタン共和国。格闘技が盛んで、以前から「レスリングの聖地」と興味を抱いていた場所だ。男子フリー74キロ級東京五輪王者のザウルベク・シダコフ(28)との練習など貴重な時間を過ごしたが、休日に動物園で、思わぬ“場外戦”に遭遇した。 その動物園は熊や虎が暮らす檻への出入りが自由。須崎も中に入ったが、熊は子どもとはいえ、立ち上がれば胸の高さほど。虎もおり、引っかかれて流血しながら「ノープロブレム」と抱っこを試みる来園者も。須崎は虎や熊と鋭い視線を交錯させ、熊に詰め寄られて隣の部屋へ移動。今度は2匹の狼に詰め寄られたが、恐怖心にうち勝って無傷で檻を出た。「危ない状況だったけど、乗り越えられた。精神力が鍛えられた」と苦笑した。 現地では熊と練習する選手もいるという。「度胸がすごい。だから強いんだなって。私も熊とレスリングができるぐらい精神を鍛えていきたい」と須崎は刺激を受けた。日本レスリング界では64年東京五輪で、当時の日本協会会長の八田一朗氏(故人)が、ライオンとにらめっこをさせるなど独特の強化策で「日本のお家芸」と呼ばれるメダル有望種目へ導いた。期せずして“八田イズム”を継承した女王は五輪連覇へ五感を研ぎ澄ます。(林 直史) ◆八田イズム 八田氏は1960年ローマ五輪で、金メダルゼロに終わった反省から自身や選手、役員、コーチ全員で丸刈りに。上野動物園で選手とライオンをにらめっこさせ、大音量で音楽を流してどんな状態でも眠れるように指導。利き手と逆の手で箸を持たせて左右どちらでも攻撃できる体勢をつくらせた。64年東京五輪では金5個を獲得した。 ◆ダゲスタン共和国 ロシアを構成する共和国の一つで、南部に位置。カスピ海に面し、首都はマハチカラ。人口は約300万人とされる。格闘技が盛んで、総合格闘技の元UFC王者ハビブ・ヌルマゴメドフ(35)、レスリング男子フリー74キロ級で五輪3大会王者のブワイサ・サイティエフ(49)、サンボなどで世界で活躍する選手を輩出している。
報知新聞社