家具需要の停滞感で「ニトリ」は「東急ハンズ」と同じ轍を踏むのか…買収した「島忠」を活かせず、PBブランド充実させるも利益率悪化の打開策とは
リモートワークの実施率は7割から4割まで縮小
家具市場の冷え込みも逆風だ。矢野経済研究所によると、2023年の家庭用家具市場規模は6830億円(予想)。前年比3.7%の減少である(「家庭用・オフィス用家具市場に関する調査を実施(2023年)」)。2024年も1.3%の減少を見込んでいる。 家庭用家具のターニングポイントになったのが、新型コロナウイルス感染拡大による自宅時間の増加だ。リモートワークが進んだことで仕事に必要な家具を買う動きが強まった。2020年の家庭用家具市場は、前年比6.5%増の7069億円だった。 ニトリは2021年2月期の家具販売事業の国内外での売上高が、前期比11.8%増の7040億円と大幅に伸びていた。 しかし、現在は需要が一服して市場は停滞感が漂っている。 東京都の調査では、2023年9月のリモートワークの実施率は45.2%だ(「テレワーク実施率調査結果 9月」)。2023年1月の実施率は50%を超えていたが、4月の新年度で比率は大きく下がった。かつては70%近くまで達していた。 リモートワークが働き方の一つとして残ることは今後も考えられるが、これ以上広がりを見せる可能性は低いだろう。
島忠が本業で稼ぐ力は半減
買収した島忠の業績が回復しないのも頭の痛い問題だ。 ニトリはホームセンター運営大手のDCMホールディングスと島忠の買収合戦を繰り広げた。1株4200円のDCMの提案に対し、ニトリは30%以上高い5500円を提示して島忠を奪いとった。 ただし、それは敵対的TOBではなく、友好的なものだ。買収後、島忠の現場側から突き上げを食らって統合に失敗した様子は見られない。両社が手を取り合ってシナジー効果を生み出そうと奮闘するものの、島忠の業績が上向かないのである。 買収する前の2020年8月期の島忠の営業利益率は6.2%だった。2023年3月期は3.0%だ。ニトリは買収当初、利益率を5年で2倍に引き上げると宣言していたが、3年で1/2以下になったことになる。 島忠はナショナルブランドの販売が中心だった。ナショナルブランドとは、メーカーや問屋が取り扱う商品のことだ。バイヤーは島忠に来店する顧客層や出店場所を見極め、ベンダーから商品を買い付けていた。このビジネスモデルは製造拠点と商品開発部が必要なく、迅速に商品を買い入れて陳列できるメリットがある。ただし、利益率は悪化する。 ニトリ買収後は、プライベート商品を強化した。島忠はプライベートブランド第1弾として、2021年11月にトイレットペーパーとボックスティッシュを販売している。ニトリの商品開発部と製造拠点を活用したのだ。 島忠の岡野恭明社長は、将来的にプライベートブランドを売上全体の4割以上に引き上げるとしている。 ポイントはホームセンター運営のノウハウがないニトリが、島忠の顧客を理解して必要とされている商品の開発をしきることができるかどうかだ。 ニトリがバックアップするプライベートブランド商品は、価格が一つのセールスポイントになるはずだ。しかし、トイレットペーパーやティッシュのような日用品はドラッグストアで十分に事足りる。ホームセンターに足を運ぶ理由にはならない。