<ネタバレ考察>深刻化する差別、食殺、骨入りドラッグ…動物アニメ「BEASTARS」最終期の生々しさ
混血種「ミックス」軸に展開
これまで以上に社会のいびつな部分を突いたシリアスな物語が展開する「BEASTARS」FINAL SEASON。そのキーワードとなるのは、肉食と草食の混血「ミックス」だ。レゴシが幼い頃に自殺した母親の死の真相、メロンの素性などがこの〝軸〟と共に描かれてゆく。 レゴシの母親は、ハイイロオオカミとコモドオオトカゲのミックスだった。祖父母が付き合っている時点から世間から奇異の目で見られていたが、母親は見た目はオオカミの姿で生まれ、やがてモデルとして人気に。だがある日から、身体にウロコが発現し始め、その事実を受け止めきれずに命を絶ってしまう。そしてガゼルとヒョウのミックスであるメロンは、生まれながらにして肉食の味覚も草食の味覚も持たず、食欲も性欲もない。人前では常にマスクをしてガゼルに見えるように過ごし、自己/他者が痛みをおぼえる際にのみ生の実感を得る――という壮絶な宿命を負ったビラン(敵)なのだ。レゴシは、メロンを追うなかで「自分がハルと結ばれて子どもが生まれた場合、ミックスとして苦しむのでは?」という悩みに直面する。
メロンとレゴシの最終決戦へ
共通する部分もある2匹が相対する物語の中で興味深いのは、レゴシが対話と理解を試みようとするのに対し、メロンが拒絶すること。メロンは「きっと孤独で理解者を求めているのだろう」とレゴシ(そして視聴者/読者)がカテゴライズする思考を利用して、ワナにはめるのだ。自分は同情や憐憫(れんびん)を向けられる存在ではなく、純粋悪であるという主張、いわば「理解の外」に自らを置こうとする姿勢、さらに神経質で劇場型の口調や動きなど、メロンに「ダークナイト」のジョーカーを重ねる視聴者も多いのではないか。 そうした意味では、「BEASTARS」の〝ラスボス〟であると同時に、ゼロ年代以降の悪役像の系譜にも合致する。原作の展開から推察するに、「Part2」ではより踏み込んだメロンのバックボーン、さらにレゴシとの最終決戦が描かれる予定。現実世界にもオーバーラップする多様性社会の難しさに切り込む「BEASTARS」が到達する帰結に、視聴者は何を思うだろうか。配信を待ちたい。
映画ライター SYO