緩和度合い調整、物価目標の持続・安定的な実現に資する-日銀総裁
植田総裁の講演後、円相場は一時1ドル=155円台に下落した。足元では154円台半ばで推移している。債券相場は上昇(金利は低下)に転じている。
植田総裁は、日銀が政策判断で重視している賃金と物価の好循環に関しては、今後の労使交渉の展開に加え、賃金上昇の物価への波及、特にコストに占める人件費の比率が高いサービスの価格がしっかり上がっていくかを注目点に上げた。
米経済に関しては、景気減速を回避しながらインフレ率を抑制する「ソフトランディングシナリオが実現する可能性は高まる」とする一方、今後の景気展開や政策運営次第で「インフレが再燃する逆方向のリスクも否定できない」とした。質疑では、トランプ次期政権の政策に関して「世界経済に影響の大きいアメリカの政策であり、大変注目してみている」とも語った。
オントラック
その後の会見では、12月会合での利上げの可能性を問われ、「その時点で適切な判断をする」と説明。円安の影響に関しては、その背後にある経済要因を含めて見通しやリスクへの影響を分析して「各会合で判断していく」と語った。
足元の日本経済は前進が見られているとし、実質金利が低水準にある中で、見通しに応じて緩和調整をしなければ「どこかでインフレ率が急に加速し、急速な金利の引き上げを迫られるという可能性もゼロではない」と指摘。利上げした7月会合以降の経済・物価は「オントラック(想定通り)」とし、時期が遅れて後手に回る「ビハインド・ザ・カーブに陥らないように適切に政策判断する」と述べた。
--取材協力:船曳三郎、氏兼敬子.
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Sumio Ito