【パリ五輪】「あれは彼の人生を懸けたシュートだった」日本を悪夢に陥れたフランスの21歳、マシュー・ストラゼルとは<DUNKSHOOT>
パリ郊外に生まれ、7歳から地元のクラブでバスケットボールを始めたストラゼルは、ラグビー選手の父親の影響で、最初はラグビーに興味を示していたという。クラブから両立は無理だと言われてバスケを選び、17歳でトニー・パーカーが代表を務めるアスベルの育成部門に引き抜かれたたものの、世代別の代表からは声がかからなかった。 その時代を振り返ってストラゼルは、「自分の価値が正当に評価されていないことに苛立ちを感じていた」とインタビューで語っている。父親は、そんな息子を少しでもアピールしようと、彼のプレー集を紹介するYoutube チャンネルを開設したりもしていた。 ストラゼルの心の中には、「(周囲からの)評価はどうでもいいと放っておく」、「見返すために懸命に練習する」と2つの思いが交錯したというが、そこで「自分の真価を見せつけたい」と奮起したことが、成長につながった。 ユース代表にも招集されるようになると、2021年のU19W杯ではウェンバンヤマと共闘して銀メダルを獲得。クラブでも20-21シーズンから4シーズン連続(アスベル21、22年、モナコ23、24年)でタイトル獲得を経験し、チームでの活躍度も飛躍的に向上している。 過小評価されていた選手が、チームの救世主となれる最高の場面を手にした――日本戦でのラスト10秒は、ストラゼルにとってまさにそうした瞬間だった。 それを知ると、あの逼迫した場面で冷静に自分の得意なポジションにスライドし、シュートを決め切ったストラゼルのあのプレーが、ラッキーなものではなく、これまでもがきながら積み上げてきた努力の結晶だったことがわかる。 ビッグプレーを決めた直後は、昂りもなく「ただ空っぽだった」、とストラゼルは語っている。 フランス代表のヴィンセント・コレHCは、「彼が今夜のマン・オブ・ザ・マッチであることは疑いようがない。でもそれ以上だ。彼は私たちを救ってくれた」と称賛し、キャプテンのニコラ・バトゥームも、「彼がこのトーナメントを救ってくれた」と感謝を口にした。 大注目を集めるウェンバンヤマの陰で、レ・ブルーのもう1人の若き逸材が覚醒したようだ。 文●小川由紀子
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