国交省、ユーロコントロールと意見交換 “空のカーナビ”実現へ情報共有
国土交通省航空局(JCAB)は6月7日、欧州の航空交通管制を担う国際機関「ユーロコントロール」(欧州航空航法安全機構、本部:ベルギー)と意見交換を実施したと発表した。次世代航空交通システム「TBO(Trajectory Based Operation:軌道ベース運用)」などの協力で情報共有し、今後は協力覚書の締結へ取り組みを進める。 【写真】真っ白い787-10飛行試験機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」 TBOは、航空機の相互間隔を保ちながら最適な経路と通過時刻を常に調整する次世代航空交通システムで、「空のカーナビ」とも表される。積乱雲や火山噴火など急な気象変化に対してスムーズに対応でき、消費燃料を削減することでカーボンニュートラルに貢献するという。 ユーロコントロールとの意見交換ではTBOや次世代航空モビリティ、交通流管理などで情報共有し、具体的な協力覚書の締結へ調整を進めていくことを確認した。意見交換は現地時間6月3日にベルギー・ブリュッセルにあるユーロコントロール本部で進め、日本からは航空局交通管制部の吉田昭二部長らが出席した。 また吉田部長は、ユーロコントロールがEC(欧州委員会)やEASA(欧州航空安全局)などと開催したTBOに関する会合「Global TBOシンポジウム」にも参加。JCABが米国、シンガポール、タイの航空当局と2023年6月に実施した共同プロジェクト「MR TBO(Multi Regional Trajectory Based Operation)」を紹介したほか、アジア太平洋地域でTBOの実証実験を目指す「パスファインダープロジェクト」など、これまでの取り組みや展望について講演した。 JCABは2009年4月から「将来の航空交通システムに関する研究会」を開いて「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)」を策定し、TBOの実現を目指している。 MR TBOにはJCABのほか、FAA(米国連邦航空局)、シンガポールのCAAS(シンガポール民間航空庁)、タイのAEROTHAI(Aeronautical Radio of Thailand Limited)の4航空当局が参画しており、2040年の「空のカーナビ」実現へ試験を進めている。2023年6月の試験にはボーイングの飛行試験機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」(787-10、登録記号N8290V)を活用し、試験を進めた。 ユーロコントロールは航空交通管制サービスの提供、戦略的な交通量管理、航空管制官の訓練、サービス料の徴収などを担う欧州の機関で、1963年に設立。英仏独など41カ国が参画し、包括協定加盟国としてイスラエルとモロッコの2カ国も加わっている。
Yusuke KOHASE