“電子書籍化不可”で18万部突破 著者に聞く制作秘話『世界でいちばん透きとおった物語』
“電子書籍化不可”といわれる仕掛けがあるミステリー小説『世界でいちばん透きとおった物語』。SNSでは「最後まで読んで納得」「鳥肌がたった」などと話題になっています。著者の杉井光さんに、制作の裏側や仕掛けへの思いを聞きました。 物語は、大御所ミステリー作家の宮内彰吾が死去するところから始まります。妻帯者ながら多くの女性と交際していた宮内の子どもが主人公。父の死後、宮内の長男から、「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」と連絡を受けたことをきっかけに、父の遺稿探しを始めます。
■このトリックは「どう考えても紙でしかできない」
――本作の仕掛けはいつ頃思いついたのですか 基本アイデアは昔からぼんやりあったんですけど、形にしようかなって思ったのは去年の初めぐらいですかね。形にするの大変だなって思っていて、踏ん切りつかなかったんですけど。いつか書くだろうって言っていたら、ずっと書かないだろうと思ったので、“よしやるか”みたいな。始める前は「大変そうだな~」って思ってましたけど、実際始めてみたらわりとそんな大変ではありませんでした。楽ではないですけど、普段使わない筋肉をずーっと使って、変なところが凝ったみたいな(笑) ――“紙の書籍でしか味わえない”仕掛けということで、やはり紙の本には特別な思いもあるのでしょうか 特にないです(笑)。このトリックがどう考えても紙でしかできないので、新潮文庫の編集者様に、「電子(書籍)では出したくないけどいいですか?」って企画を出しました。もし電子で出せるなら出したいですね、その方が売り上げも増えるので(笑)。ただどっちが好きかと言われたら紙の本の方が好きですね。 ――執筆はどれくらいかかりましたか? 2か月半くらいですね。みなさんが考えているような苦労はしてないんで、なんかちょっとお得ですね。勝手にみんな想像を膨らませていただいているので(笑)。一番大変なのは、このトリック(仕掛け)だけだとアイデアじゃないんですね。ただの思いつきなんです。それを話としておもしろい形に落とし込むのが一番大変でしたね。