福岡市で「星空の世界展」 KAGAYAさんが撮り続ける宇宙の一瞬
天文ファンらからカリスマ的な人気を誇る、星空写真家でプラネタリウム映像クリエイターのKAGAYA(カガヤ)さん(56)の写真展「KAGAYA 星空の世界展」が、福岡市中央区の複合施設・ボス イーゾ フクオカで開かれています。4月27日の開幕に合わせて来場したKAGAYAさんに、これまでの歩みや撮影のポイントなどを聞きました。 【写真】「KAGAYA 星空の世界展」福岡会場の様子
小惑星にその名前が
KAGAYAさんはイラストレーターを仕事とする一方、プラネタリウム映像クリエイターとして様々な作品を制作。宮沢賢治の小説をモチーフにした2006年の「銀河鉄道の夜」は、発表から4年で観客動員100万人を突破し、その後も各地で上映。福岡県内でも、宗像ユリックス(宗像市)のプラネタリウムで4月27日から上映されています。 写真家としても人気で、最新作「天空の庭」を含めて7冊の写真集を発表。X(旧ツイッター)のフォロワー数は93万人を超えています。天文の魅力を広めたことや、アーティストとしての功績が認められ、小惑星11949番は「Kagayayutaka(カガヤユタカ)」と命名されているそうです。 KAGAYAさんの代表的な写真を堪能できる「星空の世界展」は、2022年に神戸市からスタートして全国を巡回。6月9日までの福岡会場は、九州初開催です。
いつもカメラと一緒
会場に並ぶのは、国内外で撮影された約60枚。「四季の星空」「月のある空」「天の川を追う星の旅」「オーロラ」「一瞬の宇宙」の五つをテーマに、幻想的な作品が来場者を迎えます。 海外での撮影は、アイスランドのオーロラ、太平洋の島から見上げた星空など。国内は北海道や東京都、和歌山県など各地が舞台です。九州では宮崎や鹿児島、熊本などの夜空も紹介され、大きな都市がある福岡県ではなかなか目にできない星空のきらめきに圧倒されます。 KAGAYAさんは埼玉県出身、東京在住。小学生の頃から星空に興味を持ち、望遠鏡で見たり星座の絵を描いたりするように。中学に入るとフィルムカメラを買って撮影を開始。「自宅のお風呂場でプリント(現像)し、楽しくてのめり込みました」。 高校時代は電車やバスを乗り継いで遠方を訪ね、満天の星の下を見る体験も。次第に「星の魅力を伝える仕事をしたい」との思いを膨らませたそうです。 イラストレーター、プラネタリウム映像クリエイターとして経験を積む一方、星空写真家としての転機が訪れたのは2010年頃。「デジタルがフィルムの性能を追い越した時期」だといいます。 星空と夜景――、その両者が存在する美しい光景を伝えるには、フィルムカメラでは“力不足”な面がありました。星の光を捉えるために数分ほどのスローシャッターを使うと星が線のように写り、星の動きを追う器具を使えば風景が動いたように撮れてしまいます。 一方、進化したデジタルカメラは、10~20秒のシャッターで星の明かりが鮮明に写り、星も風景も「どちらも止まっている写真が撮れるようになった」といいます。 その目覚ましい進化を実感してから、星空観測はいつもデジタルカメラと一緒とのこと。2010年の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還も、カメラとともに感動の”瞬間”を目撃しました。「カメラが記録してくれる。実際に見ていたときには追い切れていなくても、あとで写真を見ると気づくことがある。記憶を補完してくれます」