車椅子バスケ 勝敗よりも大切なものとは 【アフロスポーツ プロの瞬撮】
スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。 車椅子バスケ 勝敗よりも大切なものとは 【写真4枚】 僕がバンコクに行ったのには二つの理由がある。 一つは、普段撮影をしている神奈川ヴァンガーズに所属している日本代表選手の必死な顔を撮りたかったから。もう一つは、自分がいない所で大きな決定が下されることは嫌だったから。 細かい枝葉はあるにせよ、そんな個人的な理由で僕は車椅子バスケ・パリ予選の地へと向かった。 ただ行ったら行ったで欲が出てしまう。 日本がこの予選で優勝し、パリへの切符を勝ち取るシーンが見たい、歓喜の瞬間を撮りたい。 自然に出てきてしまった感情ではある。ただ今にして思えばそれは雑念だった。 運命を決した準決勝イラン戦。終盤日本はイランにリードを許してしまう。 その時に、心のどこかで、最後は日本が勝ってくれる、と願いながら撮っていた。 日本の勝利に縋っていた。現実は色んな意味で残酷だった。日本は準決勝で敗れたことにより パリへの道が途絶えた。 スポーツカメラマンである以上、試合結果はとても大切な要素である。 ただ、「試合に勝ったから良い写真が撮れました、試合に負けたから良い写真が撮れませんでした」と言っていたら成長はない。冷静に判断を出来ていれば、もう少し違う写真が撮れたのではないか。 幸いにも試合会場は、どこで写真を撮っても許されるような緩い環境だった。もっとやりようがあっただろ、とその時の自分に言いたい。 もう少し話を続けたい。 バンコクでの出来事から2週間後である先週末に車椅子バスケ天皇杯が開催された。 神奈川ヴァンガーズには5名の日本代表選手がいる。選手の失意は僕には図れないほどに大きなものだっただろう。ディフェンディングチャンピオンとしてのプレッシャーもあっただろう。苦しみながら、我慢しながら、決勝の最後の最後まで諦めないで戦い抜いたヴァンガーズの選手達は立派だと思った。 それだけに掴み取った優勝の瞬間は最高だった。 今回は上記2つの大会の写真を掲載させてもらいたい。スポーツが勝負である以上、続けていれば良いことも悪いこともあるかもしれないが、僕が見たいのは全力で取り組む選手の姿であり魂だったのだ。 今回はそれに気づけたことが、自分にとってとても大きなことだ。 ■カメラマンプロフィール 撮影:長田洋平 1986年、東京出身。かに座。 早稲田大学教育学部卒業後、アフロ入社。 2012年ロンドンパラリンピック以降、国内外のスポーツ報道の現場を駆け回っている。 最近では平昌オリンピック、ロシアW杯を取材。 今年の目標は英語習得とボルダリング5級
アフロスポーツ
1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。 各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。