スケート観が一変した荒川静香さん、本郷理華さんとのアイスショー 「誰かの心に残る」を追い求めて
ようやく見つけた「三浦向日葵のスケート」
大学では初心に立ち返り、「誰かの心に残るスケート」を追い求めた。特に意識するようになったのは、引退を決めて臨んだラストシーズン。三浦は「一つひとつの練習や大会に『最後』がつくようになって、技の成功だけにこだわり過ぎず、悔いはあっても後悔はないように心から楽しむしかないと思えるようになった」と話す。 「こんなに大勢の方に注目してもらう舞台は、これからの人生でないだろうし、自分のスケートを自由に表現しよう」。ショートプログラムの「ピアノレッスン」は自ら選曲し、フリープログラムの「ラベンダーの咲く庭で」は振り付けを担当してくれた鈴木明子さんと対話を重ねながら綿密に作り上げた。「最後」のプログラムへの思い入れが強まると同時に、これまで重きを置きがちだったジャンプやスピンに加え、表情の作り方、手の動かし方、スケーティングなど細部にまでこだわるようになった。 そして、三浦は一つの答えを見つけた。「周りからは『優雅な滑り』とか『滑らかなスケーティング』などと言っていただいたり、スピンを『ポジションがきれいで回転が速い』と評価していただいたりしますが……誰かを思いながら、気持ちを込めて、自分自身が心から楽しんで笑顔で滑るスケートが『三浦向日葵のスケート』だと思います」
支えになったSNSの声が「答え合わせ」に
周りからかけられた言葉やSNSの声が「答え合わせ」にもなった。三浦は大会などで滑った後、現地で寄せられる言葉を励みにするだけでなく、SNS上での自身の演技に対する感想もチェックして自信につなげていた。「向日葵ちゃんのスケート忘れないよ」「記憶に残るスケーターだよ」「お疲れさまでした、ありがとう」。引退を発表した際にあふれたねぎらいのメッセージにもすべて目を通した。 中には「これからの未来にたくさんの幸せがありますように」「次のステージでも輝けますように」など、今後の人生を後押ししてくれる声もあったという。三浦は「今まで苦しかったこともたくさんありましたけど、報われた気がしました。『誰かの心に残るスケート』を達成できたと感じる瞬間でもありました。今は実習や課題に追われて忙しい日々を過ごしていますが、心が折れそうになってもみなさんのメッセージを思い出して前向きに頑張ります」と感謝している。 「三浦向日葵のスケート」は、1人どころか多くの人の心に刻まれた。だからこそ、胸を張って誓う。「みなさんの前で滑る機会がまた来るかは分かりませんが、自分のスケートは自分にしかできないものなので、これからも大切にし続けます」
川浪康太郎