「医師急募」…韓国の救命救急センターは医師争奪戦中
政府は患者分散対策を繰り返すだけ
韓国で専攻医(インターン・レジデント)の離脱による救命救急センターの人員空白のため、全国の病院が救急医学科の医師をめぐる「求人戦争」を繰り広げている。医療現場では、政府が「軽症患者の分散」対策を繰り返すだけで、医師不足の解消には手をこまねいているという声があがっている。 25日、大韓救急医学医師会と保健福祉部の関係者の話によると、全国408の救急医療機関は救急医学科専門医60人を採用するために公告を出している。全国の圏域・地域救急医療センターで勤務する救急医学科専門医は、昨年末の1418人から今月初めには1502人に増えたが、同期間に救命救急センター勤務の専攻医500人が離脱し、「医師の求人難」が生じている。最近は専攻医の離脱後、救命救急センターに残った医療スタッフのバーンアウト(燃え尽き)や病気、退職などで、求人競争がさらに激化している。 最上位の救急医療機関も人手不足などで診療に支障をきたしている。 圏域救急医療センターを運営する京畿道水原市(スウォンシ)の亜洲大学病院では、今年1月から今月まで救急医学科専門医14人のうち3人が退職し、さらに4人が退職願を出した。 政府は重症度の高い患者を治療できるよう、29の救急医療圏域ごとに1つ以上の「圏域救急医療センター」を指定しているが、ここまでもが人手不足に苦しんでいる。救急医学医師会のイ・ヒョンミン会長は「救急医学科の専門医が1人が抜けるだけでも(夜間当直など不在で)救命救急センターを運営できなくなる」と語った。 このような状況だが、新たに輩出される救急医学科の専門医の数は減っている。 福祉部の資料によると、全国の研修病院の救急医学科専攻医募集では、定員に対する志願者の割合は2021年に91.7%、2022年に86.6%、2023年84.2%など減少傾向にある。国立中央医療院は先月、年俸4億ウォン(約4300億円)で救急医学科専門医3人を採用するという公告を出したが、医師を確保できなかった。今月に入って毎週木曜日に救命救急センターの診療を縮小している世宗忠南大学病院も5月から専門医を募集しているが、志願者がいないという。 後続診療が円滑に行われていないことも、救急医療が麻痺する一因となっている。祝日や夜間などに重症患者が救命救急センターに来院すると、救命救急センターの医師が救急処置などを終えた後、他の診療科の当直の医師が患者を入院させて診療を続けなけれならない。 しかし、専攻医離脱の長期化により、他の診療科も患者の診療を続ける余力が少なくなり、救命救急センターが患者を受け入れられない状況が発生している。中央救急医療センターの総合状況ボードによると、この日の午後4時現在、ソウルの7つの圏域救急医療センターはすべて医療スタッフの不足を理由に眼科や外科など1つ以上の診療科の患者を診療できないという「診療制限メッセージ」が点灯していた。 大邱(テグ)のある大学病院の教授は「今月に入って外科・内科教授が辞めるなど、病院で最近毎月退職者が出ている。 (救急医学科以外の診療科でも)大学病院の教授らのバーンアウト傾向が目立っている」とし、「他の地域も同様で、慶尚南道咸陽郡(ハミャングン)の救急重症患者が慶尚南道地域で手術を受けられず、車で1時間30分距離の大邱の病院に転院の問い合わせをするほど」だと伝えた。 政府は大型病院の救命救急センターの軽症患者を分散させ、過負荷を防ぐ方針を示している。福祉部は来月から圏域・地域の救急医療センターに来院した軽症・非救急患者の診療費の本人負担率を既存の50~60%から90%に上げることにした。 スタッフの空白の問題は、採用に向けた各病院の努力で解消されているとみた。福祉部はこの日の報道資料で「亜洲大学病院など一部の病院が部分的に診療に支障をきたす場合もある」としつつも、「これらの病院のうち相当数は積極的なスタッフの確保および代替スタッフの投入などで迅速に診療制限状態から抜け出した」と主張した。 しかし、医療現場では、政府が救命救急センターの医師離脱と後続診療の麻痺など根本的な問題解決には手をこまねいているという指摘が相次いでいる。イ・ヒョンミン会長は「国内の救急医学科専門医が限られている状況では、ある病院が誰かを採用すると、他の病院のスタッフが足りなくなってしまう。(財政条件などが)劣悪な病院であるほど救急医療機能がより早く麻痺するだろう」と語った。 仁川市医療院のチョ・スンヨン院長は「重症救急患者が救命救急センターから他の診療科に迅速に入院し、手術などを受けられるようにしなければならない。 (政府の対策のように)救命救急センターの診療報酬を上げるだけではなく、救命救急センターの来院患者を処置した後続診療科に対する支援策を用意すべきだ」と指摘した。 チョン・ホソン、キム・ユンジュ、ソン・ジミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )