<解説>清少納言として大河ドラマ史に名を刻んだファーストサマーウイカ 輝けた理由をひもとく
紫式部が主役のドラマにおける清少納言を演じることへの不安や重圧は、清少納言を知れば知るほど、吹き飛んでいったというファーストサマーウイカさん。
「『これ、ほぼ私だからな』って思えてから、感情の部分で『全然、この気持ち分からないよ』ってことは一度もなかったですね。これは余談にはなりますけど、学習マンガの清少納言や、平安を題材にしたマンガやイラストの清少納言が、みんなちょっとキツネ目のキッとした顔で描かれていて、どことなく似ていることが多かったんです。それもビジュアル面においての安心材料になりましたね(笑い)」とも語っていた。
◇「常に自分に大河を課そうとした…」思いの強さが結実
物語の中盤以降、忠誠を尽くしてきた定子が亡くなったあとの清少納言の悲しみが、道長に対する憎しみへと変わる過程で、「最初のころの親近感は失われていった」というファーストサマーウイカさんだが、一方で、役の心情に寄り添うことは忘れなかった。
「ききょう(清少納言)という人間は、あけすけで奔放なキャラクターだと思いますが、人って決してワントーンはない、時と共にグラデーションしていくから、ききょうもきっとグラデーションしていったというのはあると思います。その中で『私だったらこういう態度をとらないかもな』とも思うときもありましたが、それはきっと私の人生ではまだききょうにとっての定子様に匹敵するような“光る君”を失っていないからなのかもと。そんなふうなことを考えました」とクランクアップ後のインタビューで明かしている。
敵意むき出しで、自らの手で、紫式部(まひろ)との友情さえも壊してしまった清少納言が、第43回(11月10日放送)で「恨みを持つことで、己の命を支えて参りましたが、もうそれはやめようと思います」と“終戦宣言”したシーンについても、 「急に糸が切れる瞬間ってありますよね。ものごとを頑張っていたときにプツンッてなって、『もう無理、や~めた』って瞬間。それに近い諦め、あるいは“引退”のような感覚。台本には描かれていない部分なので、想像でしかありませんが、そんなふうにうらみつらみがふっと消え去ったのかなって」と自身の言葉で説明している。