「ズッキーニ」夏野菜の定番へ レシピ検索が10年で2倍超に
地道な食べ方提案が〝成功の道〟
サラダから炒め物まで、多様な料理に活躍するズッキーニ。大手レシピ検索サイトでの検索頻度は10年で2倍超に増え、夏の定番野菜として食卓に定着した。消費の伸びを追い風に、産地でも比較的作りやすい品目として栽培が広がった。 ズッキーニは、調理法や合わせる食材を選ばない“万能野菜“としての認知度が向上し、消費を伸ばしている。 レシピ検索サイトを運営するクックパッドのデータサービス「たべみる」によると、ズッキーニの検索頻度は10年で2・3倍に増加。レシピ数は3万品以上に上る。「加熱もでき、食べ応えがある大きな切り方でも、薄切りでもおいしい。料理の幅の広さが人気の秘密」(同社広報部)とみる。 和洋中、さまざまな調味料と組み合わせて検索されている。ズッキーニとセットで検索されるメニューも、サラダやパスタ、チーズ焼きなど幅広い。飲食チェーンや、総菜など中食でも、夏の定番食材としてメニュー化が相次ぐ。 生産も拡大傾向で、農水省によると、全国の作付面積は602ヘクタール(2020年)と、10年で倍増した。
暑い時期も生育安定 収穫負担少なく
最大産地の長野県内では、夏の主力品目の一つとして台頭。JA全農長野によると、23年産は約150万ケース(1ケース2キロ)を出荷した。「夏野菜の定番として、スーパーからも安定した引き合いがある」とする。 JAながの管内では、約180人が約55ヘクタール(24年産)で栽培。夏場の出荷品目としての導入や、新規の生産者の増加などで生産が広がったという。JAの担当者は「暑い時期も比較的生育が安定し、重量野菜に比べると収穫の負担が少なく、高齢の生産者でも取り入れやすい」と利点を指摘。 同JAみゆきズッキーニ部会の山嵜智之部会長も「授粉作業や病害虫の防除といった基本的なポイントをしっかり押さえれば、比較的作りやすい野菜だ」と話す。 家庭での消費が定着した背景には、産地発の地道な食べ方提案の努力もある。飲食店からの引き合いに応えようと栽培が始まった当初は、「どう食べるのか分からず、キュウリのようにみそを付けて食べていたぐらい、家庭での認知度が低かった」(産地関係者)。 JAでは、全農長野と連携し、レシピを紹介する冊子の配布や、スーパー店頭での生産者による試食販売などを長年続け、家庭向けの認知度を向上させていった。同JAみゆき野菜花き集荷所の小林和文所長は「グラタンなど温かい料理との相性も良い。今後は秋以降の消費提案も強めていきたい」と意気込む。 (斯波希)
日本農業新聞