【会津産ウイスキー】地方創生の一手に(5月27日)
磐梯町の天鏡蒸溜所でウイスキーの仕込みが始まった。県内での製造免許の取得は郡山市の笹の川酒造に次いで2例目となる。1次産業と連携した会津産ウイスキーに育て上げ、地方創生の一翼を担ってほしい。 蒸溜所は、北海道・知床半島沖の観光船事故で亡くなったリオン・ドールコーポレーション取締役小池駿介さん=当時(28)=が創業した「天鏡」が運営する。「世界につながる高品質のウイスキーを造る」と情熱を注いできた小池さんの遺志を受け継ぐ形での門出となった。仕込み量は現在、1日当たり麦芽1トン、木だる3個分だが、本格稼働となる9月以降は2倍に増やす計画だ。 仕込みに使うのは、環境省の昭和の名水百選に選ばれた「磐梯西山麓湧水群」の軟水で、ウイスキー造りには申し分ない。一方で、原料となる二条大麦の麦芽は海外からの輸入に頼らざるを得ないのが現状だ。原料を地元で調達できれば、会津産ウイスキーとして世界に発信する上でストーリー性が増し、農業の振興と持続可能な製造にもつながる。実現には、県やJA、地元自治体など関係機関の支援が欠かせない。
海外では、ウイスキーに適した二条大麦の品種改良が進んでいるという。県は今年度から県外産の酒米に替わる大吟醸酒向けの県オリジナル酒造好適米の品種開発に取り組んでいるが、二条大麦の品種開発の予定は現時点ではないとしている。将来的に県産ウイスキーの品質向上と輸出拡大を図る上で、麦や大豆などの品種開発を手がける農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)や大学などと連携し、二条大麦の品種改良も進めていく必要があるのではないか。 年間最大1200個に上る木だるを寝かせる場所の確保も課題だ。会津地方では少子化に伴い、学校の統廃合が進んでいる。校舎や体育館、学校以外の遊休施設は有効な跡地利用になり得る。定期的に見学会などを催せば、交流人口の拡大も期待される。 ウイスキー造りは長期熟成が不可欠なため、地域づくりと同じで息の長い事業と言える。地域と県民の共感を得ながら、世界中で愛されるジャパニーズウイスキーの完成を目指したい。(紺野正人)