「日本でMMTをやってもいいことは起きない」信奉者たちが目を逸らす「アメリカではすでに失敗している」事実
日本でMMTをやってよいことにはならない
日本でホームメイド・インフレが起きなかったからといって、MMTをやっていいということにはならない。 大量の国債発行を可能にするために、日本では、長期国債を大量に購入し続けているだけでなく、長期金利を人為的に抑えている。その結果、アメリカの金利引き上げによって、日米の金利差が著しく拡大した。このため、アメリカのインフレが日本に輸入されることになったのである。この意味において、国債の大量発行がインフレの原因になっていると考えることができる。 金利抑制策の悪影響は、それだけではない。長期金利は、経済の最も重要な価格の一つだ。これが抑圧されているために、金利が経済の実態を表さなくなり、その結果、資源配分が著しく歪められている。 財政規律がなくなってしまったのが、最大の問題だ。その結果、効果の疑わしい(その反面、公平性の観点から大きな問題を含む)人気取り補助策が、次々と行われている。 国債発行を増やすという悪循環が生じている。それだけではなく、経済全体の資源配分が歪められている。これは日本経済の長期的なパフォーマンスを劣化させることになるだろう。 写真/shutterstock ---------- 野口悠紀雄(のぐち ゆきお) 1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省。72年エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『プア・ジャパン』(朝日新書)、『「超」創造法』(幻冬舎新書)ほか多数。 ----------