「裏金の温床」政策活動費 自民案は“廃止”だが…なお抜け穴
28日召集の臨時国会は政治資金規正法の再改正を含めた「政治とカネ」の議論が焦点となる。自民党の裏金事件を受けた先の通常国会で改正は中途半端に終わった。国民の税金が原資に含まれるカネに厳しい目が注がれている。1990年代の政治改革からおよそ30年。今度こそ不透明な資金をなくすことができるか。経緯と論点を整理する。 【画像】政策活動費、企業献金、資金パーティー…政治改革の主要論点と7党の立場 政党から議員個人に支出され、使途の公開義務がない「政策活動費」(政活費)を廃止できるかどうかがポイントの一つだ。ブラックボックス、裏金の温床-などと批判されてきた。同法は政治家個人への寄付を禁じるが、政党による寄付は例外的に認められているため政活費が存続している。党の政治資金収支報告書に支出費目の一つとして記載される一方で、受け取った議員は使途を報告する義務がなく、「抜け穴」と指摘される。 額が突出するのは2022年に14億1630万円を支出した自民。茂木敏充前幹事長は9億7150万円を受領していた。党は、党勢拡大や調査研究などに使ったと説明し、詳細は明かしていない。複数の自民関係者によると、国会対策で野党議員との会食費のほか、国政選挙や地方選での選挙資金に充てられ、「党幹部の力の源泉」と語る。 野党が同年に使った金額は、立憲民主党1億2千万円▽日本維新の会5057万円▽国民民主党6800万円。社民党は「組織活動費」として700万円を充てた。公明党、共産党、れいわ新選組は支出していない。 先の通常国会で野党側は廃止を迫ったが、自民は「政治活動の自由」(岸田文雄前首相)を盾に守った。改正法は年間上限額の設定や領収書の10年後の公開を付則に盛り込み、政活費そのものは残った。 自民は衆院選公約で「将来的な廃止を念頭に透明性を確保する」と記載し、惨敗して状況が一変。自民が今月21日にまとめた改革案では、今の渡しっぱなしの政活費は「廃止」をうたいながらも、必要な支出について「透明化を進める」とした。 外交上の機密や支出先のプライバシーに関する部分は第三者の監査を受けることを条件に「非公表」にして支出し、その他は公開するという。「第2の政活費」が生まれる可能性があり、不透明なカネが残る余地も十分にある。 立民、国民、社民は現在支出しておらず、廃止を主張。維新も同様で、昨冬分の明細と領収書を公開した。 政治資金に詳しい岩井奉信日本大名誉教授は「政治活動の支出は原則全て国民に公開されるべきだ。自民案は新たなブラックボックスにつながりかねない。例外を設けるなら与野党で指針を作り、抜け道を許さない改革にしなければいけない」と指摘した。 (金子晋輔)