米国のクリスマス事件簿
クリスマスツリーは家族の歴史 11月後半のサンクスギビングが終わると一斉にクリスマスの飾り付けが始まります。 我が家もサンクスギビングが終わった週末に、家の中と外の飾り付けをしました。毎年少しずつ集めてきたツリーのオーナメントは子供達のお気に入り。飛行機やドーナツ、ガムボールマシーンなど自分たちで選んだものは好きな場所に飾ります。今年の新入りはStanleyカップのオーナメント。シカゴの観光名所ビーンのオーナメントはシカゴ生活の記念に購入したもの。アメリカ人の元上司から頂いた美しいオーナメントは昔お母さんが手作りしたという貴重な品。クリスマスの飾り付けは家族の歴史や思い出を振り返るという意味合いがあることを感じます。 飾り付けは危険と隣り合わせ そんな感慨に浸っていた矢先、救急車が我が家のすぐ近くの家に止まりました。 いつも親切にしてくれるファミリーの自宅なので、心配ではあるものの、飛び出して行って良いものか迷いつつ、室内から様子をうかがうこと数分。庭先で救急隊が走り回り、ハシゴが動かされるのが見えたので、クリスマス用の電飾を屋根につけようとしてハシゴから落下したのではないか、と推測しました。 夫がとりあえず御用聞きにとそのお宅へ向かった瞬間、四方八方からご近所さんが駆けつけてきました。皆、室内から様子をうかがっていたようです。(アメリカ人もこういう時は割と躊躇することを知りました) 案の定、お父さんが屋外の飾り付けのためにハシゴに上っていたら落下し、足をひどく骨折してしまったとのこと。その後、病院へ搬送され即手術、入院となりました。全治3ヵ月の大怪我にショックを受ける面々。慣れている人でもこのような事故になることに身震いした出来事でした。ちなみに搬送された病院では「同じ理由で搬送されたて来た人、これで5人目」と言われたそうです。クリスマスの飾り付けはほどほどに。 思いやるとは何か その後のご近所さんたちの行動はさすがアメリカン。躊躇は一切ありません。 ご近所グループメールに「彼らの庭の飾り付けを有志で行います。屋根はしないけど、窓とかドア周辺とか電飾をつけましょう。きっと大きな助けになると思うよ」とのメッセージ。皆が「もちろん、行くよ!」「食事も差し入れるわ」などと返信しています。心がじんわりと温かくなりました。 海外生活が長くなってくると自分の中の“遠慮”や“忖度”パートが徐々に失われていくことを感じていました。しかし、「大怪我して入院して、もうクリスマスの飾り付けとかいう気分じゃないですよね。そっとしておくのが良いのかな」と咄嗟に思った自分はやはりまだまだ。(意味のない忖度をする人間でした) ここはアメリカ。 アメリカ人にとって相手を思いやるとは遠慮してそっとしておくことではなく、できることを色々としてあげること。親切とはお節介をしてあげること。その思いや行動が日本人間で成立するのかは難しい場面もありそうですが、この世話焼き文化で心が救われることもあると感じています。 思い描いたお洒落な電飾スタイルではたとえなかったとしても、いつも通りにクリスマスを迎えられるように皆で飾ってあげよう、その気持ちたるや最近の言葉ではエモいと表現するのでしょうか。 色々と思いを巡らせて周りをうかがうのではなく、出来ることをすぐに行動にうつす力、見習いたいものです。 友人に感謝 今月はワンオペ育児&家事が頻発していたため、私もかなり疲労がたまっていました。海外駐在(移住)の辛いことのひとつは頼れる親族が近くにないことです。地元のアメリカ人はやはり親兄妹を頼ることが多く、子供を交代で預かったり、習い事の送迎などを依頼しています。しかし、近くに親族がいない場合、頼れるのはやはり友人達です。 日本人、現地の人問わず、誰かしら信頼できる人がまわりにいるだけで気持ちは随分と楽になります。友人が学校に送ってくれたら、お迎えは自分が担当、習い事に連れて行ってもらったら、食事を届けるなどお互いができることで支え合うこともあります。今月は本当に友人達に助けてもらいました。 全て自分で解決しようとせずに、少しあきらめる、人を頼るということができるようになると、自分もほんの少し誰かの役に立てるようになるのかもしれません。そんなことを考えた2024年の12月。 2025年は平和な世界に 地域の図書館でボランティアをしていた昨日、ウクライナ人の女性と出会いました。数ヵ月前に先に渡米したお姉さんを頼って祖国を離れたそうです。旦那さんはウクライナで戦っていると目に涙を浮かべながら話してくれました。リビウ近郊の家族で経営していたベリーとヘーゼルナッツの農場に早く帰りたい。どうか2025年は彼女の願いが実現しますように、と心から願います。 皆さま良い御年をお迎えください。 Merry Christmas and Happy New Year!
河合良子