連覇、そしてW杯出場へ。「約2年3カ月の集大成を」木暮賢一郎監督が語るメンバー選考理由とアジアカップへの思い。|フットサル日本代表
“十字架”を選手が背負う必要は全くない
──2022年の前回は優勝しましたが、コロナ禍の影響もあり、国際大会の経験を積めていないなかで臨んだ大会でした。連覇を狙う今大会の意気込みをお聞かせください。 もちろん、連覇を目標にしています。ただしまず一つ目のターゲットは、しっかりと準決勝に進んで、W杯の権利を得ることが目標です(編集部注:今回のアジアカップはW杯予選を兼ねた大会でもあり、W杯開催国のウズベキスタン+アジア4枠が与えられている)。そこを突破した上で、優勝という次の目標に向かっていきたい。時系列的にもそうですがそんなプランで臨みたいと考えています。 他の大陸と比べても、アジアはW杯イヤーになると非常に力を注いでくるという傾向は、この何十年、変わっていません。日常的なリーグでは日本とイランが抜けている現状があり、多くの国はこの予選に全てを注いでくるという構図を今でも感じています。 その意味では、他国も2022年のアジアカップとは異なる戦力構成となります。どの国もモチベーションは高いですが、大会への準備という点では濃淡がすごくあります。もちろん脅威に感じることもあります。一方で、我々は継続的に強化試合を繰り返して成長するという全く違う戦略であり、プロセスを評価されるべき取り組みをしていると信じています。 育成においても、Fリーグも、各クラブのレベルも向上し、下部組織の歴史も積み重ねてきたものが代表チームに反映されると信じていますから、我々とは異なる構図の手強いライバルはいますけど、日本が取り組んでいる道を信じて臨みたい。 大きな成果を出すことで、代表チームだけではなく日本フットサルの成功になる。レベルの高さ、取り組んでいるプロセス、積み重ねの歴史を証明できると思っています。 ──タイといえば、木暮監督が2012年のW杯にキャプテンとして出場した思い出の場所でもあります。当時は三浦知良さんのメンバー入りでも話題になりました。先日、ポルトガル遠征でもカズさんが試合観戦にいらしていましたが、話をされたんですか? ハーフタイム中に少しだけですけど、話はできました。 ──カズさんと話したことや、今回が2012年のW杯以来となる、アジアの予選を勝ち抜いてW杯に出る大会になります。監督自身、どんな思いがありますか? カズさんにはいつも応援しているよ、と言ってもらいました。日頃からそうしたやりとりはさせてもらっています。ポルトガルとの試合をサプライズで見に来てくれたことは本当にうれしいですし、自分がカズさんと約束した「フットサル界をもっと引っ張っていってほしい」という強いメッセージを忘れたことはありません。 引き続き、強い気持ちで臨みたいと思っています。 予選が久しぶりというのはおっしゃる通りで、2021年は予選がなく、2016年は予選敗退してしまいました。12年ぶりの自力での予選突破を目指す。2016年の悔しい思いは、フットサル界全体で今もなお、悔しさとしてもっている方もたくさんいます。自分もそうです。 忘れたこともありません。選手に対しても一次予選では少し、その話をしました。ただし、僕自身も少しずついろんな経験を重ね、年齢を重ねたことで、今その質問に答えるなら、そうした思いや“十字架”を選手が背負う必要は全くないな、ということです。 率直に、そんなことを気にしないで、たくましく戦ってほしいと思っています。唯一、2016年大会の現場にいたのは吉川智貴だけです。W杯を経験しているのは彼と(オリベイラ・)アルトゥールと、清水和也の3人です。残りの選手は、ある意味でその経験をしていない世代ですけど、この2年3カ月で、アウェイの本当にハードなゲームを繰り返しながら大きく成長してくれました。年齢だけではなく、2021年までの代表活動にいなかった選手が圧倒的に多いですが、彼らの新しい価値観や取り組んできたプロセスを振り返れば、なにも心配することはありません。そうしたプレッシャーを簡単に跳ね除けてたくましく戦ってくれる14名の選手になっていると思います。 彼ら自身も、大会が始まればプレッシャーを感じたり、その前からいろんな話を聞いたりしていると思います。自力で予選を勝ち抜くことが久しぶりだとか、2016年に負けたとか。少なからずプレッシャーを感じることはあるかもしれないですが、世界で勝つには跳ね除けるマインドでなければいけません。大きなプレッシャーや呪縛を背負って戦うのではなく、思い切り解放して戦わせてあげたいという思いです。 もしプレッシャーを感じるのであれば、それは私だけでいい。選手たちには、ここまで取り組んできたことを出してほしいと思っています。