和やかな雰囲気で会見を行う獅司（撮影・鬼束羽瑠菜）

　「うれシシ」連発です。日本相撲協会は28日、大相撲九州場所（11月10日初日、福岡国際センター）の新番付を発表した。 　ロシアの軍事侵攻でいまだ戦時下にあるウクライナ出身初の関取、獅司（27＝雷）が東前頭16枚目で新入幕を果たし、ウクライナ在住のママ、パパへ活躍を誓った。同じく新入幕の東前頭17枚目・朝紅龍（26＝高砂）、新大関の大の里（24＝二所ノ関）も福岡市内の部屋で意気込みを語った。 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　ウクライナから初の幕内力士が誕生した。いまだ日本語がたどたどしい獅司は得意フレーズを連発した。今の心境を「うれシシです」。さらに番付表を見た感想も「うれシシです」と表現した。 　20年春場所の初土俵から約4年半で幕内の座を射止めた。「幕内に上がれてよかったです。十両で1年半、早いです。自分ではもうちょっと時間かかると思ったです」。師匠の雷親方（元小結垣添）は「本当にうれシシですね。上がる素質はあると思っていた。幕内に上げるのが自分の仕事と思っていた」。元横綱梅ケ谷が源流にある名門部屋からの幕内力士誕生に喜びを隠さなかった。 　獅司にはさらに思いがある。ロシアの軍事侵攻により、母国ウクライナはいまだ戦時下で苦しむ。「今からウクライナのママに連絡します。（先場所は）勝ち越した時に連絡しました。ママもうれシシです。みんな、うれシシです」。 　母国に帰郷できる状況ではないが、できる限りの支援を常に思う。「ママ、パパ大変だから獅司頑張らないといけない。頑張ってママ、パパにお金送ります」。十両の月給約103万円から幕内に上がれば約130万円に上がる。優勝1000万円、三賞200万円と注目度＋稼ぎは大幅に増える。戦争に苦しむ両親、ウクライナ国民に向けて両面での支援がかなう。 　雷親方は「最初に来た時からスターになる可能性あるなと見ていた」と話す。次の目標は三役、そしてその上も番付はある。「幕内はみんな強い。みんなと対戦したい」。素質は抜群だが相撲はまだ粗削り。たっぷりの伸びしろを今場所、獅司が実証する。【実藤健一】 　◆獅司大（しし・まさる）本名ソコロフスキー・セルギイ。1997年1月16日、ウクライナ・ザポリジャ出身。6歳からレスリング、15歳で相撲に転向し、入間川部屋から20年春場所初土俵。その後、雷部屋に転籍した。23年名古屋場所新十両で十両に8場所在籍。193センチ、171キロ。得意は押し。好きな食べ物はすし。趣味はアプリゲーム。