WBCヘビー”世紀の再戦”フューリーが2度ダウン奪いワイルダーに衝撃7回TKO勝利。計算された新スタイルと増量作戦
ボクシングのWBC世界ヘビー級タイトルマッチが22日(日本時間23日)、米国ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで行われ、挑戦者の元3団体統一王者のタイソン・フューリー(31、英国)が、王者のデオンテイ・ワイルダー(34、米国)を7回1分39秒TKOで下して新王者に輝いた。約8キロを増量、トレーナーを変えて左ジャブを軸に前に出る新スタイルで挑んだフューリーは3回に右ストレートでダウンを奪うと5回にもダウン奪うなどして圧倒。7回ついにワイルダー陣営が棄権の意思を示した。ワイルダーは44戦目にしてキャリア初の黒星で11度目の防衛に失敗。両者は2018年12月1日に対戦、ドローに終わっており、この試合は”世紀の再戦”として注目を浴びていた。ワイルダーには、この試合のファイトマネーの取り分を40%に減らすことを条件に3度目の対戦を要求する権利がある。
フューリー「クロンクスタイル」の左ジャブで圧倒
意識朦朧。7ラウンド、王者ワイルダーがコーナーにつめられ、ガードを割られたフューリーの右ストレートをて2発浴びたところで陣営のブリーランド・トレーナーがタオルを投げこんだ。それを確認したレフェリーが間に割って入り試合を止めた。フューリーは両手を上げてコーナーのトレーナーと抱き合った。アリーナは騒然。”世紀の再戦”は、KO勝利ならワイルダー、判定勝利ならフューリーというのが大方の予想だったが、まさかのフューリーのTKO勝利という衝撃の形で決着がついたのだ。 「まず最初に神へ感謝。第二にワイルダーに感謝したい。彼はハートを見せた。正々堂々と戦った戦士だった。彼はまたチャンピオンになるだろう。今、キングが戻ってきたんだ。素晴らしいビッグマッチだったろう!」 そうまくしたてた新王者は「歌おうかな」と、”お約束”の歌「アメリカン・パイ」を一曲アカペラで歌い始めた。場内は大合唱。プロモーターのボブ・アラム氏まで一緒に歌っていた。 試合は、1ラウンドから新スタイルのフューリーが主導権を握った。これまでのように足を使いアウトボクシングをするのではなく、フェイントをかけながらプレッシャーをかけた。このラウンドの終盤に、まるでストレートのような左ジャブがヒット。2ラウンドになるとフューリーは、L字ガードの「クロンクスタイル」からパンチの出所の見にくいフリッカージャブを繰り出す。ジャブでワイルダーを下がらせておいて右ストレート。ワイルダーも破壊力を秘めた反撃の右ストレートを繰り出すが、それを警戒していたフューリーはステップと柔軟な上半身のスウェーで外して不発に終わらせる。 3ラウンドだった。左ジャブで詰めた後に右ストレートが炸裂した。ワイルダーの左耳あたりに命中。もらったワイルダーは体を反転するようにしてダウン。なんとか立ち上がったが、足はふらつき、左耳からは血が流れた。もうワイルダーは足に力が入らない。4ラウンドには、自分でよろけてスリップダウンする始末。それでも本能でフューリーのフィニッシュブローを外しながら、なんとかクリンチに逃げて、回復の時間を稼ぐが、5ラウンド、左のボデイを浴びて2度目のダウン。もう勝負あった。 それでも10度防衛王者の意地だろう。半ばグロッキー状態になりながらも、KO負けは拒否し続けた。7ラウンドが始まろうとしても、下を向き、すぐにコーナーから立ち上がれないほどだった。ダメージを考慮すると陣営のタオル投入は賢明な判断だっただろう。