WBCヘビー”世紀の再戦”フューリーが2度ダウン奪いワイルダーに衝撃7回TKO勝利。計算された新スタイルと増量作戦
新スタイルに変えたフューリーの準備の勝利だった。2018年12月の対戦では、フューリーはテクニックを生かした手数でポイントを重ねたが、2度ダウンを奪われドロー判定に終わっていた。 フューリーは”世紀の再戦”に向けて昨年12月にトレーナーをベン・デービソンからジャバン・ヒルに変更した。ヒルは、デトロイトの「クロンクジム」の名トレーナー、エマヌエル・スチュワードの甥で、「クロンクジム」は、かつて”ヒットマン”トーマス・ハーンズを生み出した名門ジム。スチュワードが教えたL字ガードからのフリッカージャブを軸にした攻撃的スタイルは「デトロイトスタイル」、「クロンクスタイル」と呼ばれた。 フューリーは「今回は攻撃的なスタイルで戦いたいから」と、トレーナー交代理由を語っていたが、その「クロンクスタイル」を見事に体現して、左ジャブでワイルダーの動きを止めたのである。下がらされたワイルダーは重心が後ろとなり必殺の右のパンチに体重が乗らなかった。 また、その左ジャブの威力を増すために前試合よりも約8キロ増量し、123.83キロで前日計量を終えた。104.77キロのワイルダーとは約19キロ差だ。 「1日6食、9リットルを入れてKOするために増量してきた」 すべてが計算された勝利だった。 一方、敗れたワイルダーは、リング上でインタビューを受けて気丈に話した。 「ダメージ?大丈夫だ。こういうことはある。一番強い男が勝ったということ。ウチのチームがタオルを投げたが、その行為を受け入れる。この試合に万全の準備をしたつもりだったが、今日は言い訳はしない。負けは負けだ。もっと強くなって帰ってくる。ボクシング界が盛り上がって良かったよ」 ワイルダー側には、3戦目の再戦契約があるが、まず、この試合のダメージの回復をはからねばならないだろう。 アリーナは約1万6000人のファンで埋まりヘビー級では過去最大のチケット売り上げ(約19億円)を記録。ファイトマネーは、それぞれ2500万ドル(約28億円)が保証されており、さらにPPVの売り上げの取り分を加えると、40億円は突破するのではないかと言われている。試合前には、レノックス、ルイス、イベンダー・ホリフィールド、マイク・タイソンの3人の偉大なるヘビー級のレジェンドがリングに招き入れられ、盛り上がりも最高潮だったが、その注目度にふさわしい感動と衝撃のビッグマッチとなった。