成田凌&萩原利久の力量が光った、“兄弟”の切なく悲しい対話<降り積もれ孤独な死よ>
成田凌主演のドラマ「降り積もれ孤独な死よ」(毎週日曜夜10:30-11:25、日本テレビ系/Hulu・TVerにて配信) の第3話が7月21日に放送された。刑事になった冴木(成田)と、事件の犯人として疑われる異母弟の蒼佑(萩原利久)。2人の対話シーンが大きな見どころとなった。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】冴木(成田凌)の手を握る花音(吉川愛) ■予測不能な結末へ誘うヒューマンサスペンス 同ドラマは、原作・井龍一、漫画・伊藤翔太による同名コミック(講談社)をベースに、オリジナル要素を付け加えて映像化。 13人の子どもたちの白骨死体が見つかった、通称・灰川邸事件から7年。一人の少女の失踪事件をきっかけに、灰川邸事件の現場に残されていた謎のマークが再び浮かび上がる。過去と現在、2つの事件の謎が降り積もる中で真相がひもとかれていく、スリリングなヒューマンサスペンスだ。 凄惨(せいさん)な事件を捜査する主人公の刑事・冴木仁を成田、冴木の前に現れる謎の女性・蓮水花音を吉川愛、事件が起きた屋敷の持ち主で容疑者でもある灰川十三を小日向文世が演じる。ほか、冴木の先輩刑事・五味明日香を黒木メイサ、冴木の後輩刑事・鈴木潤を佐藤大樹(FANTASTICS from EXILE TRIBE)、花音と同じく灰川邸に住んでいて生き残った子どもであり、冴木の腹違いの弟である瀧本蒼佑を萩原、2024年の現代パートでの週刊誌記者・森燈子を山下美月。 ■連続傷害事件の犯人が判明 第3話は衝撃展開を迎えた。灰川邸事件の発覚と時を同じくして起きていた連続傷害事件の犯人が、冴木であると分かったのだ。 捜査をしていた五味は、事件の被害者が児童虐待の加害者であったことから、犯人は虐待に強い憎しみを抱く者と推測。そんな中、発見できた防犯カメラ映像に映っていた人物のくせから、冴木に行き着いた。 幼い頃、父親から暴力を受けていた冴木の背中には、今でも痛々しい傷が残る。防犯カメラに映っていた祈りのポーズのようなくせは、虐待する父から見つかりませんようにと願うときにしていたものだった。警察官になり、自分の父親と同じように子どもに暴力を振るう親を目の当たりにして怒りが込み上げてしまったあまりの犯行だった。 ただ、五味は「あんたが自分でケリをつけて」と告げるにとどまった。虐待の加害者を許せない気持ちは同じだが、暴行するのは間違っている。警部補である五味にとって警察のルールを破るのはこれが限界と言い、後輩を信じて自主性に任せる優しさがあった。 ■成田凌と萩原利久が圧巻の2人芝居を披露 「親父の負の遺産を俺は受け継いでいる。…俺だけじゃない、蒼佑にまで」と花音に打ち明けた冴木。12歳の冴木が亡き母方の親戚に引き取られたことで父親の新たな標的となっていた異母弟の蒼佑だが、前回、実母へのDVを思わせる描写があった。 そんな“負の遺産”から灰川邸事件の真犯人の可能性があったが、蒼佑と再会した花音は「犯人ではないかもしれない」と感じたという。 花音に促されて蒼佑に会いに行った冴木は、蒼佑がDV加害者プログラムに参加していることを知る。そして冴木は蒼佑と対話を始める。 蒼佑の思いを真正面から受け止め、後悔の念を抱いて涙する冴木。「生きていればたいていのものは直せる」という冴木のかつての言葉を糧に必死でもがいていた蒼佑は、兄の罪を知り、「あんた」からいつしか「兄貴」へと呼び方が移り変わり、瞳に宿っていた憎しみの色が薄まっていた。 約7分30秒の2人芝居は圧巻のひと言だった。暴力を憎みながらも、それを受け継いでしまったことへの恐れ。同じ苦しみから同じようにもがいていたことの悲しみ。やるせなさと切なさが入り混じる兄弟の思いを、成田と萩原が丁寧に見せた。 さて、物語はこれで、冴木がなぜ現代で警察を辞めているかの道筋がついたようだ。だが、謎が残る灰川邸事件は、留置場にいた灰川の死で真相が闇に葬られる寸前。 灰川邸事件の真犯人と花音の突き落とし事件の犯人は同じではないかと考える冴木。花音の事件の日に蒼佑がDV加害者プログラムに参加していたことでアリバイが証明されたものの、そうすると蒼佑に命の危機が訪れるかもしれないため、捜査を続行してから自首すると五味に願い出た。 一つ真相が分かっても、解き明かすべき降り積もった謎から目が離せない。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部