甲子園のメディア暴走に対する取材禁止の是非
高校野球人気の上昇に伴い報道が、どんどんエスカレートすると、他社の知らないネタやエピソードを手に入れようと、無茶な取材に走るケースが少なくない、そして一番の問題は、普段、スポーツの現場での取材経験の少ない記者やスタッフが、多数、現場に押しかけること。テレビのワイドショー班や、支局から回される“1年生記者”らが、甲子園取材のルールをよく把握しないまま取材を進め、時に“暴走”。チームの練習や大会運営に混乱を与えてしまう。 これらは、取材証を発行された社の管理不足。事件取材でもない現場での「アスリートファースト」というスポーツ取材の原則を徹底して教育しておく必要があるだろう。だが、テレビは担当部署の違い、地方支局は人手不足で、そういう横の連絡、教育が行き届いていないのが実態だ。 そう考えると、これらの暴走を防ぐには、取材禁止処置という抑止力を使うのもやむなしかもしれないが、 大会本部が取材禁止という“黄門様の印籠”をふりかざす手法について批判的な声がないわけではない。 違反行為を行ったメディアの取材証の取り上げは、オリンピックなどの国際大会でも行われているが、取材証の取り上げ報告の文書を大会期間中、ずっと貼り出している行為についても「見せしめのようで気持ち悪い」という意見もあった。 しかも、取材許可証は、基本的に東西の運動記者クラブ所属のメディアか、雑誌協会所属の出版社にしか出されておらず、その枚数も制限されている。インターネットメディアにも取材証を発行しないが、その大会本部の取材許可の選別理由もよくわからず、今なお、開かれていない高野連の権威主義的な匂いもプンプンする。 一番大事なのは、違反があった後の取材禁止処置ではなく、選手の試合に集中できる環境作りと、混乱やトラブルを事前に防ぐこと。例えば、取材規則についてのブリーフィングを事前に受けることを取材証発行の条件にするとか、取材証を顔写真付きの取材証に切り替え取材証の貸与をできないような工夫をすることも大会本部には必要ではないだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)