草笛光子×内野聖陽 初対面から同志だった、25年来の絆「この歳で主演って大変よ」「この仕事を長く続けるなら、見習わなければと思います」
◆この道を長く歩いていくには 草笛 6月になったら、『九十歳。何がめでたい』という映画が公開されるんですって。作家の佐藤愛子さんを私が演じたの。 内野 去年の暮れに僕が草笛さんの楽屋を訪ねたとき、まさにその撮影中でしたね。 草笛 私ってかわいそう(笑)。だってあなた、この歳で主演って大変よ。 内野 なに言ってるんですか。これまで何度もやってこられたでしょう。 草笛 やってないわよ。これまで120本以上の映画に出ているらしいんだけど、単独主演とかいうのははじめてなんですって。自分ではよくわからないけど。 内野 それは意外だなあ。そういえばこの間、「新横浜ラーメン博物館」に行ったんです。ここ、昭和30年代のレトロな街並みを模したところに、人気のラーメン店がたくさん入っているんですが、街並みに古い映画のポスターが貼ってあって、よく見たら「草笛光子」の名前があったんですよ。(笑) 草笛 あ、私が古い人間だと思ってバカにしてるんでしょう。(笑) 内野 そうじゃなくて、「草笛さんだ!」と思って、なんだか不思議な感覚になったんですよ。それだけ長く仕事されてきた方と僕は親しくさせていただいているんだ~って。 草笛 長くねえ。ここ最近は映画があったから、起きると毎朝「撮影です」って。これだけ長くやっていれば、そりゃあ疲れますよ。「今日は体調が悪い」ってウソついてみるんだけど、バレて叱られたりして。でも撮影中、本当に体調を崩して肺炎になっちゃった。もうこのとおり元気ですけど。 内野 (周囲のスタッフに)90歳で主演って、もしかしてギネスものですか? 草笛 賞、もらえるの? 内野 なるほど、国内ではギネスらしい、と。それはもう、ぜひ登録しましょうよ。
草笛 でもね、内野くん。これは要するに、身体が丈夫だからよ。 内野 もちろんそうですけど(笑)、長く努力されてきたということじゃないですか。僕、もうひとつ草笛さんの忘れられない言葉があって。ずいぶん前に、渡辺徹さん主演の舞台『あかさたな』を芸術座に観に行ったんです。草笛さんも出てらして、終演後にお話ししたとき、「私はもっと草書体の芝居をしたいんだけど、まだ楷書体なのよね」とおっしゃった。 草笛 やだ、全然覚えてない。(笑) 内野 「いやいや、とうに到達してらっしゃいますよ」と思いつつ、いつお会いしても、芝居に対する欲とか向上心を持ってらっしゃることに毎回ハッとしますね。「なんにもしてないわよ、もともと丈夫なのよ」って謙遜されますけど、筋トレもして加圧トレーニングもして。この仕事を長く続けるなら、見習わなければと思います。 草笛 それと正反対の生活もやってるのよ。ガボガボお酒飲んだり、明け方近くまで起きてたり。夕べも、4時まで起きてたんだから。 内野 そんな夜中までなにをしてらっしゃるんですか。 草笛 そういう時間帯のほうが、大事なことが頭に浮かんでくるのよ。映画を見ながら、「あ、これいただき」とか思ったりして。 内野 スマホいじってたら明け方になっちゃった、ということは僕にもありますけど、仕事のことを考えているうちに朝になるのはまずないなあ。
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