ワシントン・ポストは「確トラ」を認めたか…「お金配りおじさん」イーロン・マスクが支配する米大統領選の結末
■「夫と違う候補者に投票してもいい」 最後に、今回の選挙をここまで取材してきて感じるのは、7月の暗殺未遂事件あたりからトランプ支持者の態度が変わったことだ。 特に民主党が強いニューヨークでは、トランプ支持を公表するのを避ける傾向が強く、街頭インタビューにもあまり答えてもらえなかった。ところが最後の数カ月でそれが大きく変貌したのを感じる。 彼らは今や堂々とトランプ支持を主張し、トランプ氏こそがアメリカを救う救世主であり、ハリス氏がどれほど劣っているかを滔々(とうとう)と語る。以前のような「隠れトランプ」ではもうない。勝てるという自信があるからだ。それに引きずられて世間もトランプ氏の勝利ムードになっている空気がある。 一方、ハリス支持者は苦しい立場だ。インタビューしても彼らの口は重い。人種差別的、女性蔑視的なトランプ支持者の勢いを目の当たりにして、女性でマイノリティの大統領をアメリカ社会が受け入れるかどうかも疑わしいと落胆している。さらにハリス氏にはどうしても拭い去れない、イスラエル・パレスチナ問題がまとわりついている。 また特に女性と若者は、親や友人がトランプ支持者の場合、争いを避けて自分もトランプ支持と嘘をつく傾向があることもわかっている。つまり、「隠れハリス支持」が一定数いる可能性があるということだ。ハリス氏を支持するキリスト教系政治団体は「投票はプライベートなもの。夫と違う候補者に投票してもいい」とCMを打ち、女性たちに自らの意志を優先するよう呼びかけている。 投票とは投票所でたった1人、自分に向き合って行うものだ。そこで女性や若者の隠れハリス支持者が入れる1票が、僅差の選挙をひっくり返す可能性は十分にある。 ---------- シェリー めぐみ(しぇりー・めぐみ) ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家 早稲田大学政治経済学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。ラジオ・テレビディレクター、ライターとして米国の社会・文化を日本に伝える一方、イベントなどを通して日本のポップカルチャーを米国に伝える活動を行う。長い米国生活で培った人脈や米国社会に関する豊富な知識と深い知見を生かし、ミレニアル世代、移民、人種、音楽などをテーマに、政治や社会情勢を読み解きトレンドの背景とその先を見せる、一歩踏み込んだ情報をラジオ・ネット・紙媒体などを通じて発信している。 ----------
ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家 シェリー めぐみ