“ランエボ”がお手本!? “不評の電気自動車”がついに「エンジン車顔負けの走り」を実現! ヒョンデの高性能BEV「アイオニック5 N」驚きの実力とは
“ランエボ”好きの開発リーダーが手がけたヒョンデ初の高性能BEV
2015年のフランクフルトモーターショーで立ち上げが発表されたヒョンデのスポーツブランド“N”。他メーカーのそれと比べると歴史は浅いものの、WRCやTCR、さらにはニュルブルクリンク24時間耐久レースなど、量産車ベースのモータースポーツへと積極的に参戦し、数々の勝利を手にしてきました。 【画像】「えっ!…」これがBEVであることを忘れるほど走りに夢中になれる「アイオニック5 N」です(70枚)
そんなモータースポーツ活動で得られた技術やノウハウを、ヒョンデのNは素早く、色濃く量産車へとフィードバック。2017年に登場した「i30N」を皮切りにモデルラインナップを拡充してきました。加えて、Nのエッセンスをプラスさせたライトなスポーツバージョン“Nライン”も設定するなど、モータースポーツを頂点にNのピラミッドを形成。この辺りの車種構成は、トヨタの“GR”とよく似ています。 今回紹介するモデルは、そんなNのラインナップにおいて、初のBEV(電気自動車)となった「アイオニック5 N(IONIQ5 N)」。現時点において、BEVはまだまだ成長過程にありますが、なぜヒョンデのNはハイスペックなBEVを世に送り出してきたのでしょう? その理由をNのプロジェクトを牽引するジューン・パーク(JooN PARK)氏にストレートに聞いてみました。 「一般的に『BEVはつまらない』といわれていますが、本当にそうなのか? そんな疑問が『アイオニック5 N』開発のスタートとなりました。 我々はNの発足以来、ドライビングの楽しさを追求してきました。その柱は大きく分けて3つあります。ひとつ目は“Corner Rascal”、ふたつ目は“Racetrack Capability”、そして最後が“Everyday Sportscar”です。これらの柱をBEVに盛り込むことができれば、必ず“楽しいBEV”ができると確信していました。 その実現のために、『アイオニック5 N』にはモータースポーツやローリングラボ(走る研究所)と呼ばれる実験車両で培った技術やノウハウをリアルにフィードバックしています。 加えて、私は内燃機関のモデルが大好き(なんと、三菱「ランサーエボリューション」の大ファンなのだとか!)なので、自分が納得できるBEVをつくりたいという“強い思い”も盛り込んでいます」 ジューン氏が語る“Nの3つの柱”を、もう少しかみ砕いて説明しましょう。 まず“Corner Rascal”とは「コーナリングを楽しむ性能」を意味する言葉。一般的にBEVは0-100km/h加速を始めとする直線の速さをウリにしたモデルが多いのに対し、「アイオニック5 N」は“曲がること”をウリとしています。そのために、WRCで戦うラリーカーの4WD制御がフィードバックされているといいます。 続く“Racetrack Capability”とは「サーキットを本気で走れる能力」を意味する言葉。一般的に、BEVは熱問題のために「速さが持続しない」といわれますが、「アイオニック5 N」はサーキットでの連続走行にも耐え得る信頼性を実現。この辺りは、Nのテストステージであるニュルブルクリンクで鍛えられたものだといいます。 そして最後の“Everyday Sportscar”とは「クルマは五感で楽しむ」ことの具体化です。一般的に、BEVは静かでなめらかという特徴がありますが、ドライビングには音や振動、そして自ら操作することも重要な要素だと認識。それらを実現するさまざまなデバイスやアイテムが、「アイオニック5 N」には多数盛り込まれています。 ●システム最高出力は650psを発生 そんな「アイオニック5 N」は、1980年代に流行ったホットハッチを想起させるスポーツマインドあふれる内外装が個性的です。 パワートレインは、ベースモデルの305ps/605Nmからシステムトータルで650ps/770Nmへと引き上げられた前後デュアルモーターを搭載。第4世代に進化したリチウムイオンバッテリー(容量84kWh)が組み合わされるほか、気になる冷却対策もしっかりと施されています。 シャシーは、専用のボディ、サスペンション、ブレーキに加えて、21インチの専用タイヤ(ピレリ製)を採用。フルモデルチェンジに匹敵するレベルの変更が加えられています。 カギとなる制御系には、前後の駆動力配分を11段階に調整できる“Nトルク・ディストリビューション”、ドリフト走行をアシストする“Nドリフト・オプティマイザー”、8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を想起させる加速感やシフトショックを生み出す“N eシフト”、そして、エンジン音やジェットサウンドを発生させる“Nアクティブサウンド”など、まさにてんこ盛りの内容となっています。