「年齢も年齢だったんですぐに不妊治療を選択するため、病院でいろいろと検査をしたんです。そのときに夫の無精子症が判明しました」。 あかねさんは愕然としたと話す。 「でも夫の方が落ち込んでいましたね。そりゃそうですよね。これで自分の子供を持つことは絶望的になったんですから。でも私は夫婦2人の生活もいいななんて思っていたんです。時が来たら精子提供や養子について考えてもいいかなとも思いましたし…」。 夫婦で乗り越えようとした矢先に事件は起こる。 「義両親はとにかく跡取りを熱望していました。特に舅の執念にも似た思いは半端じゃなかった。だからこそ、なかなか言い出せずにいたんですが、夫が意を決してすべてを洗いざらい話したんです」。 ーそんなことあるか! 「舅は無精子症であることすら信じられなかったみたい。受け入れられなかったんでしょうね。そこからしばらく義実家にも行きづらくなっていたんですが、ある日連絡があって…。お食事に招かれたんです」。 義実家を訪れるといつも通り、義母の美味しそうな料理にお寿司などが並んでいたと話す。 「招かれていたのは私たち以外に次男家族。こちらは子供が5人もいてすごく賑やか。彼らの存在があったからこそ、孫ができなくても仕方ないって思えたところも私たち夫婦にはありました」。 食事を済ませ、歓談をしているときだった。あかねさんが度肝を抜かれるような発言が飛び出す。 ーあかねさん。精子提供ってあるだろ? ーは、はい。 ーどうだ。浩介の子種ってのは。 ーはっ? 【後編】では、舅のとんでも発言の続きにフィーチャーしていく。 取材・文/橋本 千紗