「国の重要文化的景観」住民から“返上”の声 “縛り”で暮らしにブレーキ 「申請うんざり」「荷物」焼き物の里で物議
「荷物です。そういう風にみんな受けてしまっている」――。国の重要文化的景観に選定されている大分県日田市にある小鹿田焼の里で、地元住民からこの選定を外してほしいと求める声が高まっています。いったい何が起きているのでしょうか。 【写真を見る】「国の重要文化的景観」住民から“返上”の声 “縛り”で暮らしにブレーキ 「申請うんざり」「荷物」焼き物の里で物議 ■指導通りにリフォームしたのに… 小鹿田焼(おんたやき)は、日田市の山あいで生産されている約300年の伝統をもつ焼き物で、現在は9軒の窯元がその技術を受け継いでいます。 窯元の1人、坂本浩二さん(55)は6年前、防災対策と作業場の拡張のため、自宅を含めて建物をすべて取り壊し、その土地に新しく建物をつくる「建て替え」を市教委に申し出ました。すると担当者からこう告げられたといいます。 坂本浩二さん: 「市教委から文化的景観というルールがある。それは義務である。こういうルールがあるから家を触ったらダメだと」 小鹿田焼の里は、窯業や農業といった当時の生活や生業のありかたを理解する上で貴重な景観と評価され、2008年に九州で初めて国の重要文化的景観に選定されました。この景観を守るため、建築行為に対し規制が設けられていて、坂本さんのケースではこの規制に抵触するとして、「家の構造や規模は変えられない」と市教委から説明を受けていました。 その結果、坂本さんは家の「建て替え」ができず、自費で4000万円以上かけて望まない「リフォーム」を余儀なくされることに。豪雨で家の裏山が崩れたため、防災対策として作業場の壁を45センチ程前に出しました。もともと作業場を広くするつもりでしたが、「リフォーム」しかできないという説明により、作業スペースが手狭になったのです。手作業で大量の器をつくる小鹿田の窯元にとって、作業場の狭さは死活問題といえます。 坂本浩二さん: 「狭くなったので何十年続くとかなりのストレスになる」 ところが2年前、坂本さんが当初申し出ていた「建て替え」は規制に抵触せず、市教委の誤った指導だったことが発覚。さらに市教委が被害回復の解決金として、およそ2200万円を支払う方針を示したのは謝罪から1年3か月も経った今年の2月20日でした。