レーザー攻撃、乱入者にも動じなかったGK鈴木彩艶「なんかやってるなと」
[11.19 W杯最終予選 日本 3-1 中国 厦門] レーザー攻撃にも、乱入者の妨害にも惑わされることはなかった。日本代表GK鈴木彩艶(パルマ)は後半25分、相手の決定的なシュートを右手一本で阻むなど、最小失点での勝利に貢献。苦しい戦いが続いたアジア杯から1年足らず、いまや「落ち着いてやることが常に大事」という言葉どおりの振る舞いを続け、激動の2024年の代表戦を締めくくった。 【写真】「全然違う」「びびるくらいに…」久保建英の9年前と現在の比較写真に反響 日本国歌への大ブーイングで幕を開けた敵地・中国戦。前半は鈴木がアウェーの洗礼に晒される形となった。開始早々、鈴木がビルドアップでボールを持つとレーザーポインターによる緑色の光が顔面に直撃。「前半は眩しかった。ピカッときましたね」。しかし、その中でも「やるべきことに集中していた」と自身のペースが揺らぐことはなかった。 前半34分、中国サポーターの乱入で試合が中断した場面でも同様だった。若い乱入者は鈴木の前で立ち止まり、煽るようなジェスチャーを見せたが、「なんかやってるなというくらい」と笑みを浮かべた鈴木。「変に気を取られてやられるのが思うツボなので。自分が別に何かをするわけではないし、対処すべき人に任せてやるべきことに集中するだけ」と冷静にプレーを続けた。 2-0で迎えた後半開始早々の3分には味方の対人ミスが続き、今大会初めて相手選手にゴールを決められる形となったが、チームは同9分に再びリードを広げ、流れを渡さなかった。同25分にはMFウェイ・シーハオに味方選手によるブラインドから鋭いシュートを放たれたが、鈴木がイレギュラーしたボールを右手一本で阻止。反撃を許さなかった。 「ブラインドプラス股下で、味方にぶつかったあとで、ピッチもよくなかったのでバウンドがちょっとイレギュラーだったけど、手前に弾いた時に残さないように、外に割り切って外に弾けた。いかに最小失点で追えられるかにこだわっていたのでよかった」(鈴木)。アウェーの空気感でも判断力を維持したスーパーセーブで、3-1での勝利に導いた。 鈴木にとって2024年は激動の1年間だった。1~2月のアジア杯ではグループリーグで不安定な失点が続き、流れに乗れなかった日本もベスト8で敗退。夏にはイタリア・セリエAのパルマに移籍を果たし、世界で最もGKに厳しい視線の集まるとされるリーグで日々を過ごし、時には批判も浴びてきた。 それでもセリエAで揉まれた経験はたくましさにつながり、日本代表活動に合流するたび、ますます安定感を増し続けてきた。「アジア杯でチームの勝ちにつながるプレーができず、悔しさが残ったけど、そのあと自分としてもチームを変えることであったり、ゲームを通じて少しずつ成長できている実感がある」。 セリエAの日々で身につけたのは「力を入れすぎない」ことだ。「アジア杯の反省として、力を入れすぎると広い視野で見られなくなってしまうので、良い具合に力を抜いてプレーできていることが活きている」。イタリアでの厳しい目線にも「いろいろな評価はあるけど、その中でも自分のやるべきことに集中してやることと、細かいミスを気にしないこと」と精神的にブレることなく、「毎試合毎試合、練習から学びの多い日々を過ごせている」と貴重な経験にしているようだ。 そうした厳しくも充実した日々が、レーザーポインターや乱入者などのアクシデントにも惑わされない自信を生んでいる。「海外でプレーしていればいろんなことがあるので自分としては全く気にならなかったというか、普段どおりかなと思いますね」。弱冠22歳にして、日本代表の守護神にふさわしい風格が身につけている。 ここまでのW杯最終予選6試合でゴールを守り続けてきた鈴木の働きもあり、日本は今回の最終予選を5勝1分で進み、次戦のバーレーン戦に勝てば3試合を残してW杯出場権が決まるという状況となった。鈴木にとっては浦和レッズ時代に過ごした聖地・埼玉スタジアム2002で歓喜の瞬間を迎えられるという絶好の舞台となる。 「埼玉スタジアムでホームで勝ち切って決めたいし、そこまでにより成長した自分で臨めるように取り組んでいきたい。埼玉スタジアムでW杯を決められるところは非常に喜ばしいこと。気を引き締めて取り組んでいきたい」。セリエAの舞台で成長を続け、さらにたくましくなった姿で埼スタのゴールマウスに立つつもりだ。