音声同時配信技術「オーラキャスト」普及の動き 聴覚障害者25億人時代に備える
2050年に世界で聴覚障害者の人口が25億に達する―この予測をもとに次世代の補聴器に応用できる音声同時配信技術「Auracast(オーラキャスト)」の普及を巡る動きが活発化している。短距離無線通信の標準化団体Bluetooth Special Interest Group(SIG)が推進する。 【関連写真】サイレント阿波踊り(出所:SSM推進事務局) SIGのアジア太平洋地域(APAC)および中国担当のマーケティング・ディレクターであるロリ・リー氏は7月に取材に応じ、聴覚障害は「世界全体に関わる」と強調。世界保健機構(WHO)の分析をもとに22年時点で15億人に障害があり、50年に25億人に達するとし、低消費電力の無線音声配信技術「Bluetooth LE Audio(LEオーディオ)」の機能の一つオーラキャストを打ち出した。 テレビやパソコン、館内放送システムなどから高品質の音声をデータとして送信。一定範囲のスマートフォンなどが台数制限なく受信し、連携する補聴器やイヤホンで再生する。 日本語、英語など複数の音声データを同時送信し受信側が選べるほか、パスワード保護をかけ特定の相手と共有も可能だ。 リー氏は日本の電子部品、最終製品メーカーに採用を呼び掛け、「日本市場はオーディオ産業が強いため、生態系(エコシステム)全体をリードしてほしい」と期待を述べた。 オーラキャストの用途は補聴器にとどまらない。SIGに参加する東芝情報システムは、マイクが拾った日本語をクラウドで英語と中国語にして、オーラキャストで送信する同時通訳のデモを披露。同社技術統括部マーケティング・商品企画担当主幹でSIGボードメンバーの足立克己氏はスマホで同機能を使えれば日本の若者は海外でより活躍できるとした。 同社はこのほか、4月に東京都渋谷区でヘッドホンを使い、周辺への騒音を気にせずテクノDJと阿波踊りを楽しむ「サイレント阿波踊り」に連携するなど多様なデモを試みている。
電波新聞社報道本部