【インタビュー】独自仕様のFire TV搭載で、あらゆるコンテンツに届きやすく。感動をさらに広げる4Kテレビ「ビエラ」新シリーズ
VGP2024 SUMMER 受賞インタビュー:パナソニック 音元出版のアワード「VGP2024 SUMMER」にて、新たにFire TVを搭載、放送とネット動画をどちらも快適に楽しめる、パナソニックの4K有機ELテレビ/4K液晶テレビシリーズに対して「総合金賞」が贈られた。初搭載されたOS「Fire TV」は、同じプラットフォーム上に並んだ “入り口” から、放送コンテンツやネットコンテンツへ、障壁を超えたシームレスなアクセスを可能にするもの。パナソニックとAmazonとの開発協業の成果だ。ここから広がるテレビの新たな価値について、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の阿南康成氏に語っていただいた。 パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 副社長執行役員 ビジュアル・サウンドビジネスユニット長 阿南康成氏 ■Amazonとの開発協業で実現したパナソニック独自の「Fire TV」を搭載、放送コンテンツもネットコンテンツもシームレスに楽しめる新ビエラ ーー アワード「VGP2024 SUMMER」で総合金賞を受賞された4Kテレビのビエラについてお伺いします。まず、新たに搭載されたFire TVについてご紹介ください。 阿南 このたびは総合金賞という栄誉ある賞を頂戴しまして、誠に有難うございました。開発メンバーにとっても、大変励みになっております。 今回4Kビエラの新シリーズに搭載しましたFire TVは、ネットのコンテンツだけでなく、そこにさらに放送コンテンツなどもすべて、同じプラットフォーム上に表示してワンアクションでアクセスできる独自の機能をもっています。さらにお客様の視聴データにもとづいてのお薦めを表示するなど、さまざまなコンテンツに触れて楽しんでいただく機会をサポートし、テレビの新しい価値を提案するOSと言えます。 ーー こうしたOSを開発するに至った背景をお聞かせください。 阿南 まず、テレビを取り巻く状況の変化ですね。コロナ禍にあった2020年以降にOTTサービスと言われるコンテンツ配信サービスが拡大し、ご利用者数も急速に増えました。ネットのコンテンツが日常的に楽しまれる状況になって、テレビOS進化の方向性が問われるようになったのです。 これまでのプラットフォームでは、放送の視聴とネットの視聴との切り替えに、いくつかのアクションが必要でした。そこを払拭して、放送やネットに関わらず、どのコンテンツにもより手軽にアクセスできる環境にする必要があると。パナソニックのテレビは常に高画質・高音質の価値を追求していますが、肝心のコンテンツにたどり着くまでに障壁があっては台無しですから。 そういった中で、今回ご縁があってAmazon様との開発協業が実現しました。Fire TVはずっとAmazon様が推し進めてきた非常に使い勝手のいいOSですので、それを採り入れた上で、さらに当社の技術を統合させ、まったく新しい独自のOSを共同で開発することになったのです。レコーダーなどと連携した「お部屋ジャンプリンク」や「過去未来番組表」だけでなく、当社家電群と連携した「音声プッシュ通知」など、これまでのパナソニックの技術の蓄積で実現してきた周辺製品との連携にもこだわって、互いの技術を融合させることができました。 新たなFire TVでは、見たいコンテンツを、放送波であってもネットサービスであってもシームレスに見つけられます。検索機能についても、これまでのOSでは意図するコンテンツのキーワードをまず入力する必要がありましたが、新たなOSでは、お客様の視聴データなどに基づき、そのお好みの傾向に合わせた作品などもおすすめとして提案してきます。 今、OTTのサービスには非常にたくさんのコンテンツがありますが、見たいものを探し出すのが大変で、サービスに加入したけれども見たい番組が見つからない、というお困り事は当社にも届いていました。Fire TVによってまだ見たことのないコンテンツとの新たな出会いをつくれるのは、Amazon様と一緒に開発したからこそ実現できた大きな価値だと思っています。普段スマートフォンなどでOTTサービスをご覧になっている方も含め、テレビを使っていただく機会が増えると期待しています。出会ったさまざまなコンテンツを、当社の技術が実現する迫力のある映像と音で味わって、感動していただきたいですね。 ーー Amazonさんとの開発協業に至るのには、どういった経緯があったのでしょうか。 阿南 元々Amazon様とパナソニックは、いろいろな局面で協力し合う場面がありました。今回、Amazon様にとってはFire TV OSを拡大させる狙いがあったでしょうし、当社はテレビのOSをよりよく進化させたい思いがあり、タイミングが合致したのかなと思います。 金澤 着手してから完成するまでには2年ほどかかったでしょうか。おかげさまでこのOSは現段階でも安定性を確保しています。工数がかかる開発をこの期間でやり切れたのは、技術陣が頑張ってくれたおかげだと思います。今回の総合金賞の受賞は本当に、技術陣に大きな励みとなります。 ビジュアル・サウンドビジネスユニット 国内マーケティング部 部長 金澤貞善氏 阿南 かなりの労力がかかりましたが、Amazon様のチームとの開発協業でかなりの人が携わってくださったのも大きいです。 今までとは違うやり方ということですね。何でも自分たちだけでやっていては、スピードがついていかないですから。 ーー そのFire TVは、2024年の夏モデル、御社が1番注力しているフラグシップのところから全てのモデルに搭載されていますね。 阿南 いろいろなお客様のニーズに合わせて商品ラインナップを準備しますが、それぞれのお客様に同じ価値体験をしていただきたいという思いで、全モデルで対応させていただきました。使い勝手についてもどのモデルも同じです。機種によってマイクが搭載していないものは音声でのコマンド対応ができませんが、基本的な操作感については全て同じです。 ■輝度も黒の再現性もさらに高めた高画質と立体音響も楽しめるスピーカー、画を判断し効果的な補正を施す4Kファインリマスターエンジン「デュアル超解像」搭載 ーー 画質や音質の技術面についてもご紹介くださいますか。 阿南 パナソニックのテレビにとって、画質の進化は非常に重要です。昨今ミニLEDの影響もあってテレビの輝度が注目されていますが、ビエラも従来以上に注力し、もう1段輝度を高めています。そして高画質エンジンとして「新世代 AI高画質エンジン」を搭載し、当社の有機ELの強みである黒の再現性も高めながら、高輝度にこだわって絵作りをしてきたわけです。 金澤 4Kファインリマスターエンジン「デュアル超解像」というAIによる自動画質調整機能も特徴的です。AIの技術についてはこれまで、「オートAi画質・音質」として放送コンテンツのタイトル名や映像の特徴データからAIがコンテンツのシーンの種類を判別し、そのシーンに最適な映像・音声処理を行うという事に使っておりました。今回の「デュアル超解像」では、映像の1つ1つのフレーム内で部分ごとにAIが映像の特徴を判断し、画を補正することに活用しています。背景ならばやわらかくとか、建物だからエッジを立ててといったように、状況に応じて表現を最適化する形です。こうしたAIの使い方は新しい取り組みとして高く評価していただいていますし、独自の技術として強くアピールさせていただいています。 音質面については信号処理のチューニングを少々変えています。たとえばラインアレイスピーカーでの制御の部分を以前よりこまめに行えるようにしていますが、アマゾンミュージックの有料版にあるようなドルビーアトモス対応のコンテンツなどを再生するときに、非常に効果を発揮します。普通の2チャンネル再生では出せないような、立体音響も楽しめます。 ■テレビユーザーにもスマートフォンユーザーにも。ターゲットに直接的に訴えるアプローチで、新しいビエラをアピール ーー プロモーションについてもお伺いします。今回のビエラを含めて、昨今はテレビCMも積極的に展開されていますね。 阿南 おっしゃる通りテレビCMの表現にもこだわり、新しいビエラの価値をお伝えできるような2つのコンテンツを制作しました。大画面が人々の感動を増幅させることを訴求した「その感動をもっと大きく。篇」とプロダクトの機能価値をストレートに伝える「ファクト篇」です。2つのアプローチで、地上波のテレビ視聴者にはテレビCMで、テレビ未視聴のスマートフォンユーザーにはTVerやSNSなどを通じて発信しています。 金澤 「その感動をもっと大きく。篇」は、スマートフォンでコンテンツを楽しむ人々のさまざまなシーンを表現しつつ、大画面で楽しむともっと感動が大きくなるという想いをお伝えしています。これらのCFは、従来のようにタレントさんや商品を前面に出すといった手法とは別の表現で、さりげなく見ていると気づきが与えられるようなコンセプトです。こうした表現の手法も、大きな変化かと思います。「ファクト篇」は、高画質や迫力ある音響の機能面をアピールしながら、放送やネットのコンテンツのサムネイルが一斉に並んだFire TVの利便性をお伝えしています。 またデジタルコミュニケーションとしては、YouTuberを起用した動画も発信していて、UIの進化にフォーカスした内容がかなりご好評をいただいています。さらにFire TVのトップページ画面に広告を出すという手法で、Fire TVのユーザーへダイレクトにメッセージを届け、認知を広げるようにしています。 阿南 Amazon様のFire TV Stickをすでにお使いのお客様に対しては、今回のFire TV搭載ビエラの存在を大きくアピールできます。Fire TV Stickは、ネットコンテンツへの対応にまだ追いついていないテレビの機能を拡充する役割を果たします。今回、その機能をダイレクトにテレビに搭載したことで、Fire TVの良さを伝える環境を新たに広げることができるかと思っています。Fire TVの価値をよくご存じのユーザーの方々に、ネットコンテンツに加えて放送コンテンツもシームレスに選択できるところはおおいに響くと思っています。 ーー これまでのインタビューで、パナソニックのテレビは、高画質・高音質を訴求するクオリティ軸と、お客様の暮らしに寄り添う “くらしスタイル” 軸、2つ価値を展開すると伺いました。今回のFire TVは、クオリティ軸に位置付けられるビエラの新製品全機種に搭載されていますが、くらしスタイルのシリーズについてはいかがでしょうか。 阿南 それについては、今のところ検討中です。 ーー では録画機のディーガのFire TV対応はいかがですか。以前はネット対応でないテレビの機能をディーガのネット機能で補間する考え方でしたが、今後そういった方向性は。 阿南 昨今ではテレビがネット機能を持つのは当たり前になりましたので、ディーガとは役割を分けて考えています。テレビにはネット機能を集約させ、ディーガは録画機能に注力して全録対応などを拡充させる方向ですね。 ーー Fire TVは、ビエラの海外モデルにも搭載していますね。グローバルではスマートテレビをとりまく環境はどんな感じでしょうか。 阿南 Fire TV搭載モデルはグローバルでどんどん拡充しています。今年のCESでは欧州モデルを発表させていただいていましたが、この夏から順次、世界各国で導入するべく準備を進めています。 グローバルでのスマートテレビ環境については、いろいろなデータがありますけれども、日本での普及率が1番高く、コロナ禍で一気に高まり全体のだいたい7割~8割と見ています。家でテレビを見る機会が増え、OTTサービスの加入者も増加した動きは世界的に共通かと思われますが、こういったものに対する感度は、やはり日本が1番高いと感じます。 ーー テレビの昨今の市場動向については、どのようにご覧になっていますか。 阿南 コロナ禍の、特に2021年から2022年頃に巣ごもり需要でテレビの買い替えが動きましたけれども、その後は減少傾向でした。しかし今年から少しずつですが、需要が戻りつつあります。落ち込みはだいぶ軽減してきたかなという風には見ています。 ーー コロナ禍の巣ごもり需要から、一時たつとまたその買替え需要も想定できますしね。 阿南 そう思います。特に今年はオリンピックイヤーです。4年に1度のビッグイベントですから、ぜひ綺麗な大画面と音でお楽しみいただきたいですね。パナソニックはワールドワイドパートナーでもありますから、しっかりアピールしていきます。 ーー ラインナップの考え方についてもお伺いします。ミニLEDに軸足を置き、有機ELと両方の展開をされるメーカーさんもありますが、御社のラインナップでは有機ELを3種類の展開として充実させていますね。 阿南 ご存知の通り、我々はプラズマテレビの時代からずっと、自発光の技術にこだわってきました。有機ELは、まさにその自発光の進化のデバイスだと思っていますので、これを我々のハイエンドの本丸と位置付けて、しっかり進化させたいという思いです。ミニLEDももちろんニーズとして認識していますが、お客様に対する我々のメッセージは有機ELなのです。ミニLEDを拡充させるよりも、ある程度有機ELにフォーカスした方がお客様に伝わりやすいかと思っており、今回は特にここの進化に重点を置いて準備をしたというところです。 ーー 画質・音質の進化に加えて、新たなFire TV でコンテンツを見る、探すというユーザビリティも大きく進化しました。テレビのある日常がますます充実しますね。今後の展開もおおいに期待しています。
PHILEWEBビジネス 徳田ゆかり