「濃密な神話に浸った」「今のアメリカには虎永が必要」 アメリカ人が口々に語る『SHOGUN』の圧倒的な魅力
重要なシーンは、ブラックソーンが腐ったキジを吊るし、不気味でまずいウサギのシチューを作って、日本のホストたちは礼儀正しくいながらも味はひどすぎると思ったところだ」 「食べ物は、文化的違いの最も身近な象徴かもしれない。この場面で、エキゾチックでかつ野蛮な文化は、歴史的に支配的であった、つまり白人側だ」と鋭く指摘する。 女優のカーさんも「当時、イギリスに毎日入浴する習慣がなかったことなども学ぶ機会になった」と言う。
日本のアニメや漫画から流暢な日本語を学んだゲーム会社のマーケティング・コーディネーター、ミゲル・モランさんは、アメリカのドラマが陥っている一種のパターン化を指摘する。 「アメリカのテレビ番組は、(傾向として)スケールが小さく、設定がオフィスやレストランの中などになっている。それに比べて、ユニークで壮大なスケールのSHOGUNを見ることができて興奮した」 モランさんはまた、「主役の2人の演技も素晴らしかったが、全編を通して照明やメイク、せりふなどもすべての人物を際立たせる役割を果たしたと思う」とも語る。
■SHOGUNはアメリカ国民の願いをかなえるもの SHOGUNが描かれた戦国時代を、今年の混沌とした大統領選挙を体験している現代のアメリカに通じる部分があるという見方もある。日本在住の作家・翻訳家のマット・アルト氏は、授賞式前にニューヨーク・タイムズに寄稿し、こう分析した。 「私たちアメリカ人は今、戦国時代ではなく、戦国的文化の時代にある。真田が演じた虎永は、まさに今日に欠けている人物だ。分極化し、分断された世間を巧みに操り、それをつなぎ合わせることができる。
オーディエンスが真田が体現する虎永に惹かれるのは無理もない。2024年のSHOGUNは、単に魅力的なテレビ番組ではない。アメリカ国民の願いを叶えるものだ」 日本育ちで国際政治学者でもあるジョシュア・ウォーカー・ジャパン・ソサエティー理事長からも話を聞いた。 「SHOGUNは、東洋と西洋が出会うという時代を超えた物語だが、今回のドラマ化では、徳川時代から今日に至るまでの日本の魅力を、ハリウッドが魅力的だと感じるような信憑性をもって再構築した。