引退・稲葉の人生を変えたノムさんのひとこと
稲葉はメジャー移籍を目指して2005年にFAを行使した。結果、海を渡ることができず日ハムへ移籍。2006年には日本一に貢献、その日本シリーズではMVPに選ばれている。翌年には、首位打者(.334)を獲得。プロ13年目にしての遅咲きの初タイトルだった。 片岡氏は、日ハム移籍後の進化こそが、稲葉らしさだと言う。「ヤクルトでも結果を残したが、むしろ日ハムにFAで移籍してから開花したよな。野球も環境も含めてパの水があったんじゃないか。セではボールゾーンを使ってくる投手が多く、変化球への対応に苦労していた。だが、日ハムに移籍してから変化球打ちが巧くなった。パの投手はストライクゾーンで勝負してくるから変化球への苦手意識がなくなったんだろうけど、プロで10年やって成長を続ける選手も珍しいだろう。日ハムでは、苦手だった左投手も克服したし、そういう努力を最後の最後まで怠らない選手だったな」 稲葉は、引退理由を「いつもやれることができなくなった。自分のバッティングができなくなった」と言ったが、それは、全力疾走、全力努力を20年間、続けてきた稲葉らしい引き際だったのかもしれない。不思議な運命に導かれ、波乱万丈の野球人生を送った努力のバットマンは、明日、4万人超の惜別の稲葉ジャンプでバットを置く。