モラハラ夫に犯されて絶望、逃げるように不倫した妻は“悪女”なのか? 40歳女優の“葛藤”から目が離せない|ドラマ『わたしの宝物』
人物の心理描写は丁寧なのに、展開はジェットコースター
そして第2話では、更にスピーディな展開に驚かされました。序盤は稜の子を宿した美羽が離婚を迷う様子や、宏樹のモラハラの背景(会社で上司と部下の板挟みに苦しみ、美羽にツラく当たってしまっていた)や葛藤する様子が、丁寧に描写されていました。 しかし30分を過ぎたころに急展開。稜に想いを寄せていた同僚・莉紗(さとうほなみ)により、稜の生存が伏せられていたことが分かります。いや、生きているとは予想していたけど、発覚はやっ! しかも、ほなみが隠していたのか! えぐっ。 そんなツッコミも束の間。美羽は母とのやりとり、そして「お金は出すけど、子育てには参加しない」と宣言した宏樹との会話を経て、“托卵”を決断。用意していた離婚届を、出生前親子鑑定書と一緒に燃やしたと思ったら、次のシーンでは出産。えっもう?! 妊娠期ほぼ描かないんだ……。 最後は「子育てに参加しない」と断言していた宏樹が、赤ちゃん抱っこして、号泣しているし。
人間の振れ幅を表現する俳優陣はさすが!
第2話まで観て、登場人物の一面だけを強調しない、多面的な描き方は秀逸だと感じました。前述した松本はもちろんですが、特に宏樹を演じる田中圭はさすが! 第1話のはじめは「なんだこのモラハラ野郎!」と思わせる嫌味たっぷりな言動でしたが、びしょ濡れで帰宅した妻にタオルを用意して拭くシーンをはじめ巧みな表情の変化で、単なる嫌な奴ではない“含み”をもたせています。 第2話ではモラハラ行動に至ったと思われる経緯や葛藤、最後の号泣シーンまでを表情豊かに演じ、観る者を惹きつけました。
第3話の予告にも戦慄! ますます目が離せない
そんな宏樹とは対照的に描かれ、美羽の癒し的存在である稜。第2話ではアフリカで活動中に「俺、日本に大切な人がいる。その人と一緒になる」と豪語するシーンがありました。学生時代から想い合っていたとはいえ、一度結ばれただけでそこまで言えるのか?! と違和感を覚えていたら、第3話予告でちょっと怖くなりました。 予告には、帰国した稜の姿と「何度でも会いに行く」「待っててくれてると思うんだ」の台詞が。死んでいなかったとはいえ、一夜を共にしただけで突然連絡がとれなくなった自分を、美羽が待っていると思えるものでしょうか? 結婚している美羽への執着が垣間見えて、ぞくっとしました。 稜には、他にどんな一面があるのか。そして稜の同僚・莉紗や、宏樹が通う喫茶店のマスター(北村一輝)、美羽の友人・真琴(恒松祐里)は、果たしてどんな人物なのか。徐々に登場人物たちの本性があぶり出されていくであろう、今後の展開がますます楽しみです。 <文/鈴木まこと(tricle.ltd)> 【鈴木まこと】 tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
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