『二月の勝者』著者が語る「2月1日は『スラムダンク』の山王戦」|VERY
中学受験の今を描いて大人気の漫画『二月の勝者』。作者・高瀬志帆さんに、取材の裏話、作品に込めた想いをお聞きします。今回は、「入試本番」を迎える子どもを持つ親が今できることや心がまえを、漫画の注目シーンとともに伺いました。(『二月の勝者-絶対合格の教室-』©高瀬志帆/小学館)
臨場感あふれる入試本番を描く上で心がけていること
『二月の勝者-絶対合格の教室-』©高瀬志帆/小学館 ――今、物語はいよいよ2月の入試本番を迎えていて(※取材当時)、ものすごく臨場感のあるシーンが続いています。心情描写がとても丁寧で、かつボリュームも割いていますが、やはり本番がピークというお気持ちでしょうか。 高瀬志帆さん(以下、敬称略):連載を描きながら、その間もずっと取材は続けているのですが、やっぱり一番ドラマチックなのは本番が始まってからという話を塾講師の方から聞きまして。小4から受験勉強を始めたとして3年かけて育ててきた生徒たちの晴れ舞台、それが2月のほんの数日間だとおっしゃるんですね。たとえば、長い間、練習してきたアスリートがオリンピックに出て数秒で競技が終わるとしても、その数秒の世界がものすごく濃密だと思うんです。入試本番も最後の晴れ舞台なので、合格発表だけ描いて「この子はこうでした、この子はこうでした」で終わるのはもったいないなというのがありました。『スラムダンク』の対山王工業戦のような心持ちですね。 ――なるほど! 高瀬:あるいは『ガラスの仮面』の紅天女です。今まさに、紅天女のつもりで描いています(笑)。もう一つ気をつけているのは、今までの巻でもそうですが、当事者のタイム感に合わせて描くことです。その人が長く感じている時間は、長く感じているその感覚に沿って描きたいというのがあります。実際に中学受験を経験した方にとって、2月1日と2日は、とてつもなく長く感じると思うんです。たとえば1日の午前午後が残念な結果だったとして、それからの2日目は、傍から見れば同じたったの1日ですが、当事者にとってはこの辛さは永遠に続くんじゃないかという長さに感じるのではないでしょうか。そこはやはり体感通りに描かないと伝わらないという気持ちがあるので、ここは絶対にボリュームを割きたいと思っています。