競馬とAIの行き着く先とは 「将来的に競馬の裁決はAIに?」JRA側も積極導入しようとする動き
新年早々、美浦トレセンの調教スタンドで寒さに震えていると、あるベテラン調教師に「そんなんじゃ冬の北海道に行けないぞ」と話しかけられた。調教師は管理馬を見るために冬場の北海道に行かないといけないのだから大変ですね。そのように返したら、「そんな頻繁には行かなくなったな。今はリモートで牧場にいる馬を見たり、レースの打ち合わせをしたりできるからね。デジタルの時代だよ」と笑いながら返された。 ここ数年のトレンドワードにもなっている『AI』。野球でも投手のフォームやボールの回転数、打者のスイング軌道などを細かく分析することが増えたと聞く。これは競馬の現場にも進出しているそうだ。近年は馬の心拍数やストライドの大きさを細かく計測して、今の状態や適性をつかむことが昔より容易になっているという。「そういった最先端のシステムを活用する調教師も増えている。すごい時代になったよな」と前述の調教師も感心していた。 続けて「将来的に競馬の裁決はAIにやってもらうのがいいんじゃないかな。レース中のわずかな動きを見るには、人間の目じゃ、どうしても限界がある。制裁の重さに関しても、より客観的に判断できるだろ?」と持論を展開していた。 確かに、馬同士の接触や進路の妨害があった場合、AIに故意か過失かを判断してもらうシステムは画期的だ。もちろん騎手の心理状態や馬の気性など、現場にいる裁決委員の視点が必要な要素も多い。そこでAIと人間の知見を組み合わせることで、より正確で公正な裁決が実現できるのではないだろうか。 JRA側もAIを積極的に導入しようとする動きが見られる。JRA-VANが昨年から始めたサービスの「パドックアイ」も、パドック動画をAI技術により自動で馬別に分割する技術が用いられているという。レース中の各馬の位置取りを可視化した「トラッキングシステム」しかり、レースの臨場感が伝わる「ジョッキーカメラ」しかり、JRAはAIに限らず、新しい技術を導入しようとする姿勢が伺える。前述のAI裁決が実現する日は近いかもしれない。 競馬予想においても、近年はAIを活用したサービスを目にする機会が増えてきた。私が見たのは、近走着順や騎手の乗り代わりなどを分析して、馬券妙味などを数値化するものだった。いまだに、気になる馬の近走映像を繰り返し見たり、調教時計とにらめっこしたりしているアナログ予想派の私は、デジタルの波に取り残されないか心配だ…。それはともかく、AI技術によって競馬がどのように進化していくのか注視していきたい。(デイリースポーツ・刀根善郎)