死に在庫を生き生きとした「ライブ ストック」に スタイリストの挑戦、故郷の長野から全国に
そして小沢は、新たな価値を、さまざまな手法で届ける。例えば商品には、一着一着に思いの丈を綴ったカードを下げたり、可動式の什器を活用するなどして空間を演出。ブランドの垣根を超えたミックスコーディネートも、新たな価値の表現方法の1つだ。小沢は、こうした手法を「雑誌の3D化」と呼ぶ。ミックスコーディネートや、可動式の什器を使った空間演出は、雑誌の世界では当たり前の新たな価値を伝えるための手段。二次元の雑誌での取り組みを、三次元の「エディストリアル ストア」で再現している感覚だ。思いを綴ったカードは、雑誌の文章やキャプションのような存在なのだろう。
編集長は小沢、イベントでは
ゲストエディターを招き異なる視点を発信
「エディストリアル ストア」のオープンから2年。小沢の思いや取り組みは今、少しずつ広がっている。同じ長野県の松本パルコを皮切りに、丸の内や渋谷、南青山で開催したイベントには、ビームスやユナイテッドアローズ、ディストリビューターのコロネットなどが参画した。
イベントについて小沢は、「自分は編集長。そこにゲストエディターを招いている」と、ここでもファッション誌の感覚を忘れない。例えば「リステア」の柴田麻衣子クリエイティブ・ディレクターや、シトウレイ=ストリート・スタイル・フォトグラファーをゲストエディターに招いて、彼女たちが選んだ「ライブ ストック」を集積して発信。まさに小沢が編集長を務めるファッション誌に、柴田やシトウは寄稿したり、ゲスト編集者としてページを作ったりの取り組みだ。
小沢は、在庫に新たな命を吹き込む「ライブ ストック」という考え方には、「他にも応用できる弾力性」があると捉えている。上田の「エディストリアル ストア」は、「ニューヨークのソーホーやブルックリン、パリのマレにあっても負けない存在」と小沢。引き続きさまざまなゲストエディター、ブランドや企業と共に、「ライブ ストック」という概念を上田から全国、そして世界に届ける。