30歳以下の視聴者は「なぜマラソンを見て募金するのかが分からない」…「24時間テレビ」若者からソッポのリアル
決定的だった着服の発覚
結果として、「テレビ局の放送内容は偽善ばかり」という認識が広まった。その矛先が「24時間テレビ」にも向かった。 「例えば『番組の会計がブラックボックスになってしまっている』という疑問もネットが最初でした。出演者のギャラなど番組の制作費と、CMの広告収入、そして募金の関係が全く開示されていない。おまけに募金は小銭が多い。ごまかそうと思えばいくらでもできる。そんな疑念が強まっていく中、鳥取県の日本テレビ系列地方局・日本海テレビジョン放送の幹部局員が10年にわたって寄付金を着服していたことが昨年11月に発覚し、ネット上の懸念が正しかったことが証明されたのです。これが『24時間テレビ』に対する不信のダメ押しになりました」(同・井上氏) 番組への信頼度が低下すると、「24時間テレビ」のコンセプトにも疑問の声が強くなっていく。例えば、なぜ、やす子は苦しみながらマラソンを走らなければならないのか。これは「彼女が苦労することで、感動した視聴者が募金する」という二段構えの演出になっているからだ。しかし、この演出は納得できないという層が増えているという。 「30代より下の世代と話していると、『なぜマラソンを見て募金するのか分からない。そんな暇があるのなら、やす子さんが直接、募金を訴えたほうがタイパがいい』と本気で首を傾げます。マラソンというワンクッションを置くことで多数の人々が感動してきたのは事実だとしても、これからの世代は『全く無意味な演出』と冷めた目で見ることは重要でしょう」(同・井上氏)
“お祭り騒ぎ”の問題点
比較が可能なのは、赤い羽根共同募金運動や、NHK歳末たすけあいだろう。例年、前者は5月から、後者は12月から始まる。立派な社会的関心事ではあるが、誰もお祭り騒ぎはしない。歳末たすけあいの場合、NHKのアナウンサーがニュースで報じ、自ら赤い羽根をスーツの背広のジャケットに飾るぐらいだ。それでも毎年、多くの人が募金を行う。 「『あんなお祭り騒ぎの放送でなければ、「24時間テレビ」の趣旨は理解できる』という若い人も珍しくありません。具体的には当日も普段通りの放送内容で、定期的に募金会場の様子を流す。これだけで充分だという意見です。わざわざ多数の芸能人にギャラを払ってお祭り騒ぎをするくらいなら、その制作費を募金に回したほうがいいのではないか、と番組を全否定する意見も増えてきました」(同・井上氏) 重要なのは現在、「24時間テレビ」に納得していない若い視聴者層が、50代になったところで「若い時は『24時間テレビ』が嫌いだったが、年を取ると素晴らしく思える」と考えを改める可能性は少ないことだ。