熱中症対策で見直される水道水 「東京水」の静かなる革命
昨今、夏場の熱中症対策は行政も乗り出すほど、社会問題化しています。毎年、多数の犠牲者が出ていて、東京都では2013年6月~9月 までの3か月間における熱中症の死亡者数は115人にのぼります(東京都福祉保健局)。 熱中症対策の一番の特効薬は、こまめな水分補給です。しかし、「水道水を飲むのは抵抗があるし、わざわざペットボトルのミネラルウォーターを買うと財布に響く」と、ついつい水分補給を怠りがちです。 しかし、東京の水道水はもう、かつての“いわゆる水道水”ではないようです。
これまでは「臭い・不味い・体によくない」
これまで東京の水道水は「カルキ臭がする」「カビや雑菌が気になる」と、敬遠されがちでした。 「水は飲む以外にも入浴・洗濯にも必要な暮らしを支える生活の根幹です。そうしたことから、東京都水道局では1989(平成元)年から安全でおいしい水づくりのプロジェクトに着手しています。同プロジェクトでは、年々、処理方法の技術を向上させていきました。その結果、かび臭の原因となる2-メチルイソボルネオールやアンモニア態窒素は100%の除去率を達成しています」(東京都水道局) 浄水場の処理技術が向上しても、各家庭の蛇口に水が到達するまでには長い経路をたどります。浄水場から給水所、給水所から各家庭の蛇口まで、マンションなどの集合住宅なら屋上などに設置される貯水タンクが適正に管理されていなければ、水は臭く・不味くなってしまうのです。飲み水としての満足度を上げるために、水道局は2004(平成16)年から貯水槽の点検調査を実施。美味しい水道水を追求しています。
浄水場と給水所の2段階で塩素をチェック
水道法では、残留塩素濃度を0.1~1.0mg/Lに定めています。塩素が少ないと衛生的に問題がありますが、多すぎるとカルキ臭が強くなって飲用に適さなくなります。都水道局は水道法を遵守しながらも美味しい水道水を実現するために残留塩素濃度を独自に0.1~0.4mg/Lに定めています。 「通常、水道水は浄水場で消毒しますが、蛇口に到達するまでの距離に応じて塩素が薄れてしまいます。そのため、塩素濃度の下限である0.1mg/Lを下回らないように、それを見越して浄水場で多めに塩素を注入してしまいます。都水道局では浄水場で塩素濃度を計測しますが、家庭の蛇口までの中間地点にある給水所でも塩素濃度を計測し、さらに塩素を追加するかどうかを判断します。浄水場と給水所の2段階で塩素をチェックすることで、塩素の低減化を進めました。これで、蛇口から出てくる水が塩素濃度下限の0.1mg/Lに近い状態になりました」(同局) 東日本大震災以降、東京都水道局は放射能の測定も毎日実施しています。検査結果はHPで公表し、安全性にも万全な対策を講じているのです。 これまでの東京の水道水は、臭い・不味い・体によくないといったイメージで語られてきました。定着した負のイメージを覆すには、長い歳月がかかりましたが、東京都水道局の飲める水道水への取り組みは着実に成果を出しつつあります。